「正しい」ことは感情を無視していい理由にならない
認知科学者の今井むつみが『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』(日経BP社)のなかで、日本の行政は感情を無視して一方的な通達が目立つと指摘している。感情は非合理的なものだと思われがちだが、認知科学的には必ずしもそうは言い切れない。
「多くの人は、『自分は合理的に判断し、決定している』と思っているかもしれませんが、そうではありません。選択や意思決定の多くの場合、人は、最初に感情で、端的に言えば『好きか嫌いか』で物事を判断し、その後、『論理的な理由』を後づけしているに過ぎないデータが、非常に多くの認知心理学や脳神経科学の研究で報告されています」(今井前掲書)
感情を軽く見てはいけない理由である。正しいと自分が思うことはあってもいいが、だからといって感情を逆撫でするような対応はまずかったのだ。
さて、勝負は県知事選である。論点はわかりやすい。内部通報の取り扱い方に端を発して職員への対応をめぐって混乱が続いた斎藤県政のあり方を是とするか否かだ。
前回の知事選で斎藤氏を担いだ維新、自民も別候補を模索している。選挙については多額のコストがかかることへの批判も出ているが、混乱の決着を選挙でつけるという選択自体は決して悪くはない。知事選後も斎藤県政の問題は残り続ける以上、選挙は各党派の腕の見せどころだ。活発な論戦に期待したい。