月2日休みなら1年で24日。損失があまりに大きい
全国的に産婦人科医の頭痛専門医をもっと増やしたいという思いから、稲垣は日本頭痛学会の公式サイトに「頭痛専門医への道~産婦人科編」というページを作るなどの取組みも行なっている。女性の患者が多い疾患であるにもかかわらず、一般的な認識としてはまだ低いと稲垣は指摘する。
「学校教育に取り入れたり、医師が企業で話をしたり、そういったことが広まればいいなと思っています。たとえば頭痛で月に2日休んだとして、1年間にすると24日、かなりの社会的・経済的損失につながるとも言われているんです。
以前シングルマザーの患者さんで、頭痛のせいでお仕事をずっと休んでいる方がいたんですけど、幸い治療がうまくいってお仕事にも復帰できたんです。その人が問診票に『感謝の気持ちしかありません』って書いてくれていて、それがすごく嬉しかった」
頭痛診療を担当したことで、稲垣はもともとの専門である女性診療にもより厚みが出たという。それは内診や検査などの技術だけに頼ることなく、しっかり患者さんの話を聞くことを何より大切にする医療を身につけたのだ。
(取材・文=西村隆平)