睡眠と睡眠不足にエストロゲンがどう影響するかは人間もマウスも同じようなものだろうとモングは考えている。
「この働きは人間にも置き換えられる。(健康と生存における睡眠の重要性を思えば予想できるとおり)哺乳類の睡眠・覚醒回路は高度に保たれているからだ」
「エストロゲンが人間の睡眠に影響する理由も、進化の過程で受け継がれてきた生殖関連の特徴かもしれない。哺乳類は、繁殖期には活動的になりがちだ。とはいえ、今回の研究には含まれないが、私たちが突き止めた強みの1つはエストロゲンは覚醒状態を強化する傾向があること。つまり女性、特に更年期の女性は途中で目覚めることが減り、睡眠の質が向上する可能性がある」
もう1つの研究では、メスのマウスはオスよりも睡眠不足から回復しやすいことが分かった。睡眠不足になった後、遺伝子発現の変化がメスはオスに比べてはるかに少なく、影響を受けた遺伝子はオスが1100個を超えたのに対し、メスでは99個だった。
研究チームはマウスを1週間にわたって仲間から隔離するなどした後、睡眠不足の状態に陥らせた。それから脳の一部を切除・凍結。概日リズム(24時間周期の体内時計のリズム)の違いによる遺伝子発現と混同しないよう睡眠不足でないマウスの脳も同時に切除した。
「無作為のRNAシークエンス解析の結果、メスは同年代のオスに比べて、深刻な睡眠不足になった後の海馬の遺伝子発現の変化から早く立ち直った。変化が見られた遺伝子もかなり少ない。さらに発情期前のメスでは、睡眠不足の個体とそうでない個体に海馬の遺伝子発現の差は見られなかった」と、論文にはある。
「大いなる謎」の解明へ
この結果はホルモンの変化とも関連する可能性があり、モングらの研究結果を裏付けるものだ。