日本を代表する駄菓子「うまい棒」が12円から15円へと値上げすることがメーカーから発表された。しかし、値上げを非難する声はほとんど聞かれなかった。桜美林大学准教授の西山守さんは「ディズニーリゾートやNetflixなど、炎上しない値上げには特徴がある」という――。

値上げなのに「ありがとう」の声が上がった「うまい棒」

円安と原材料費の高騰により、値上げラッシュが続いている。多くの消費者は、値上げはやむを得ないものとして受け入れつつも、SNSやネット上では不満の声が吐き出され続けている。

そうした中で、値上げが素直に受け入れられたのみならず、賞賛された商品がある。菓子メーカーのやおきん(東京)が販売する、スナック菓子「うまい棒」だ。

「うまい棒」は、2024年10月出荷分から、現在の販売価格12円から3円値上げし、15円で販売される予定となっている。なお、同商品は、2022年1月に10円から12円に値上げてしている。

うまい棒12円に値上げへ=2022年1月25日、東京
写真=ロイター/共同通信イメージズ
うまい棒12円に値上げへ=2022年1月25日、東京

「うまい棒」は、2022年からの2回の値上げで価格は1.5倍になってはいる。しかし、1979年の発売当初から1本10円で販売されており、約42年間この価格を維持してきた。

今回の値上げに対して、批判的な声はほとんど見られない。むしろSNS上では「値上げしても買います」「これまで安く売ってくれてありがとう」といった、応援、感謝の声が多数投稿されている。値上げしたことで、これまで安い価格を維持してきたことが逆に注目を浴びる結果となっている。

「ガリガリ君」との共通点

この例で思い出されるのが、赤城乳業(埼玉)のアイスキャンディー「ガリガリ君」の値上げである。「ガリガリ君」は2016年に25年ぶりに60円から70円に値上げした。さらに、その8年後の2024年3月1日の出荷分から80円に値上げとなった。

「うまい棒」と同様、消費者は「ガリガリ君」値上げを受け入れたのみならず、応援、感謝の声がSNSで相次いだ。最初の値上げ後、「ガリガリ君」の販売数は減少するどころか増加し、その後も安定的に年間4億本の売り上げを確保している。

両者に共通する要素として、下記のことが挙げられる。

1.長期にわたって低価格を維持してきた
2.競合がいない唯一無二の存在である
3.固定ファンが付いている
4.値上げに対して正直、誠実なコミュニケーションを行った

すべての商品やサービスにおいて、同様のポジションを築けるわけではないが、「値上げ時代」に両商品から学ぶべきところは多いように思う。