父親の認知症が発覚し、フジタさんが介護をすることになって…

――お父さんの認知症が発覚したのはそのすぐ後ということですが、「介護をしよう」と自然に思えたのでしょうか。

フジタ いや、自然にというよりは問題が起きてしまって。警察や消防隊の方から、父親のことで僕に連絡が来るようになったんです。例えば「お金を盗まれた」と思った父親が警察に通報をして、でも実は自分が使っていたとか、ちょっと転倒して救急車を呼ばれるたびに僕に連絡があるので、「介護せざるを得なかった」というのが最初だったかもしれないですね。

――お父さんの認知症の症状に気付いたのはどういう経緯でしたか。

フジタ 銀行で下ろしたお金を盗まれたと思ったり、「スーパーで買った商品が盗まれた」と言うので防犯カメラで見てもらったところ、実際は買ってすらいなかったとか。そういう「盗まれた」という妄想が2回くらい起こったときに、認知症ではないかと。それで病院で診てもらったところ、やはりそうであることがわかりました。

父親は認知症になってからも、内縁の妻にお金を渡し続けていた

――介護が始まってからは、付きっ切りで一緒にいたのでしょうか。

フジタ そうですね、最初はどういう感じで介護をするのかわからなかったので、とりあえず一緒に住み始めて、2年くらいは。薬を飲んだか、食事を食べたかどうかも自分でわからなくなってきていたので、生活をともにして。

普通は市に相談してケアマネジャーに繋いでもらうとかするんだと思うんですけど、最初はどうしたらいいかわからなくて。後日介護の判定をしてもらうと、最初は要介護2だったのが要介護4になり、ヘルパーとデイサービスをフルで使える状態になったのでそれからは一緒に住まなくなりました。

――介護費用はフジタさんが負担されたのですか。

フジタ そうです。父親の収入は年金だけなので、施設や老人ホームに入居するとなると全然お金が足りなくて。さらに父親は、内縁の妻にお金を毎月渡していましたから、そのお金も僕が負担していたような形です。

――それはいつ頃からですか。

フジタ 僕が「認知症かな」と気付いたあたりですかね。それでも「どうしても会いたい、お金を渡したい」と言って。だからしばらくは僕がお金を渡していたんですが、今度は内縁の妻が、父親の年金を「自分が管理する」と言い始めて。年金を管理すれば、お金を全部自分のものとして使えると思ったんだと思います。でも父親は金遣いが荒い人なので、それもすぐに「やっぱり無理だ」ということになりました。

そこで話をして、お金を渡すのをなしにしてもらうように言うと「わかった」と。それから父親が亡くなるまで、内縁の妻とは一切会ってないです。