老後を幸せに過ごせる人にはどんな特徴があるのか。精神科医の和田秀樹さんは「かつて、高齢者専門の病院で働いていたことがあったが、社会的な地位が高い人でも見舞客が絶えない人もいれば、誰も会いに来てくれない人もいた。若い頃に上にばかり媚びて、下を大事にしてこなかった人は、人生の最期を気の毒なかたちで送ることになる」という――。(第1回)

※本稿は、中尾ミエ、和田秀樹『60代から女は好き勝手くらいがちょうどいい』(宝島社)の一部を再編集したものです。

ソファに座って落ち込むシニア男性
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「若い頃に勝ち組だった人」は幸せなのか

【和田秀樹(精神科医)】どの年代のときに勝ち組だったかで、その人の生き方もかなり変わりますよね。

20代はすごい勝ち組だったのに年を取るほどに落ち目になる人と、若い頃はそうでもなかったけれども年を取るほどに人気が出る大器晩成型みたいな人もいる。どっちがいいかというと、やっぱり私は後者じゃないかなと思いますね。

私も27歳くらいの頃に出した受験に関する本がベストセラーになったのですが、その後はあまり冴えなくて、結局、60代に入ってから『80歳の壁』という本がものすごく売れて、仕事が急に増えました。こういう人生のパターンのほうが、きっと生き残りやすいのではないかなと思います。

だから若い人たちも今すぐ売れたいとか、早く出世したいとか、あくせくするよりも、年を取ってから成功したほうが、その後の人生も長いから得だよと言ってあげたいですね。

【中尾ミエ(歌手、俳優)】でも、若い頃の特権というものもありますでしょう。今さえよければいいと思うのが若さでもあります。「そのときはそのとき」というように、年を取ったときのことなんかまず考えません。私も人生の後半について、切実に考えるようになったのは、60代になってからでした。

【和田】私自身、先ほど申し上げたような人生観に変わったのは、浴風会よくふうかい病院という高齢者専門の病院が杉並区にあって、そこで働いた経験があったからです。もともとは、関東大震災の際に家族を亡くし、介護など身の回りの世話をする人がいなくなってしまったお年寄りのための救護院として、皇后陛下(貞明ていめい皇后)の御下賜金をもとに作られた、日本初の公的な養老院が始まりでした。