ウォーレン・バフェットよりも稼いだ投資家

前項で述べたとおり、投資は長期運用がベストだ。そこでひとつ質問だ。世界でいちばん成果を出せる投資家はだれだろうか? 投資の神様ことウォーレン・バフェット氏だろうか。イングランド銀行を潰した男、ジョージ・ソロス氏だろうか。

最強の投資家――それは死者である。なぜなら死者は株価がいくら変動しようと決して売らないからだ。資本主義経済は長期的には確実に成長する。ということは、ひたすらホールドするのが最良の選択となるはずだ。

ここで少し個人的な話をしたい。私は仮想通貨(暗号資産)のイーサリアムを2014年の最初期に1万5000円分くらい購入した。すると1年ほどして価格が上昇しはじめた。そして2017年12月、一気に高騰。暗号資産市場は大いに沸き、私のイーサリアムの保有額も約3000万円まで跳ね上がった。購入金額の2000倍になったわけだ。仮想通貨の取引は投機的な側面が強い。売り時の見極めがすべてだ。私はそのタイミングで利益確定(売却して利益を得ること)することにした。

ところが思わぬ事態にぶつかった。私の秘密鍵(パスワード)が不具合を起こしてイーサリアムが取り出せなくなっていたのだ。あれこれ試してみたが無理。結局そのまま放置するしかなかった。そして私はじきに放置したこと自体、忘れてしまった。

1万5000円の仮想通貨が2億円超に

そこからイーサリアムの価格はどうなったのか。乱高下を描きながらも、さらに上昇していった。放置して4年ほど過ぎた2021年の秋ごろ、私はふと自分の保有額を確認してみた。驚いた。実に2億円近くになっていた。この4年間でさらに6倍だ。さすがに2億円は見過ごせない。私は気合いを入れて再度、秘密鍵の攻略に挑んだ。でもやはりどうにもならない。9ケタの数字をただ眺めるしかなかった。

そして2024年5月時点で、私のイーサリアムの保有額はもっと増えて約2億5000万円になっている。もとの購入額は1万5000円。それが10年後、2億5000万円だ。爆増である。取り出せないのが惜しいが、とにかく爆増だ。

仮想通貨は大儲けできる! 仮想通貨に投資しよう! と言いたいのではない。そもそも仮想通貨取引は投機的なゲームだ。安定した投資にはなりえない。一攫千金を狙って大火傷した人を私はたくさん知っている。とりわけ市場が飽和状態のいまは迂闊に手を出すべきではないだろう。

私はここで仮想通貨の火力について解説したいのではない。自慢話をしたいのでもない。今回のエピソードで伝えたいのは、理想的な投資マインドの在り方である。