続いて、外国からの留学生に特に人気だという、英国人講師による日本の伝統文化についての授業。人数は10名ほど。教壇の周りに集まって和気あいあいと、しかし真剣に話し合っている。男鹿半島に伝わる「なまはげ」は社会的に見てどのような意義があるかユーモアを交えて論じる授業に、笑い声が上がっていた。
国際教養大学の成功の秘密の一端は、クラス・サイズにあると知った。日本の多くの大学は、大教室で教師がマイクでしゃべる形式の授業を採用している。それでは、現代社会を生きるうえで必要な批判的思考(クリティカル・シンキング)が身につかない。
カフェテリアで勉強していた日本人の学生と話した。「授業で、英語が得意な学生ばかり発言してしまう、ということはないの?」と聞くと、彼は、「いいえ。少し英語の表現が拙くても先生が、君の言いたいことはこうだろうと補ってくれるので、みんな議論に参加しています」と言う。
批判的思考力は英語力と等価ではない。小さなクラス・サイズで、徹底的に、真剣に議論することが大切。国際教養大学のあり方は、日本の大学の改革の方向性にヒントを与えてくれる。
見学が終わった後で、中嶋学長にお目にかかることができた。「おめでとうございます! やりましたね!」。握手を交わす中嶋学長の顔が、輝いている。
秋田の田園風景の中で始まった、小さな教育改革。グローバル化の波が押し寄せる中、日本の大学のあり方が、現状のままでいいと思っている人は少ないだろう。
これからの日本人の学びのかたちに関心がある方は、国際教養大学を訪問してみればよい。課題の認識とともに、大いなる希望もわき上がってくるだろう。
(写真提供=国際教養大学)