一度不登校になると学校に戻れない

一度不登校になってしまった子は、なかなか学校に戻ることができていないという現状があります。東京都教育庁指導部の「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」のデータを見ると、令和4年度の学校復帰率は小学校29.5%、中学校21.7%。つまり、小学生では約70%、中学生では約78%の子どもたちが学校に復帰できていません。

フリースクールや通信制の学校等、別の選択肢をとっているのです。

【図表2】学校復帰率
図版=『不登校の9割は親が解決できる』(PHP研究所)より

なお、高校は通信制があるのに対し、文科省に認められた「通信制の小中学校」はありません。通信制では、心身の発達段階にある子どもたちの状況を見極めることが難しいからです。

小学4年生で不登校になってしまった子の親御さんが、相談機関で「どのくらいの子が再登校できているのでしょうか」と質問したところ、「通信制高校に行けるようになった子はけっこういますよ」と言われてショックを受けたという話もあります。確かに通信制高校はありますが、小学4年生の子にとってはまだ5年も先のことです。「事実上、不登校は解決できていないということか」と思ったそうです。

「原因」を解決しても登校できない

それでは、不登校の原因とはどのようなものなのでしょうか。

いじめ、友だちとのトラブル、先生との相性、勉強が苦手……。

一般的に、不登校のイメージとしてよく挙がるのはそういった問題です。しかし、実はこれらは根本的な原因ではありません。

学校に行きたくない原因が明確であるなら、それを解決できれば再び学校に行くことができるでしょう。たとえば、友人関係のトラブルが原因であるなら、仲直りをする・その友人と距離を置く。先生との相性が原因である場合、学校に伝えて配慮してもらうなどです。問題解決に向けて具体的に動けるならば、それに越したことはありません。

ただ実際には、目の前の問題を解決しても、やはり再登校できないことが多くあります。学校を転校してもまたすぐに不登校になってしまったりするのです。

考えてみれば、学校生活の中で何らかのトラブルはあるのが当たり前です。私たちも子どもの頃、友だちとケンカをして「学校に行きたくない」と思ったことはありましたよね。でも、友だちとケンカをした子が全員不登校になるかというと、そんなことはありません。「イヤだなぁ」と思いながらも学校に行き、トラブルを乗り越えていく子が大勢います。

勉強が原因である場合も同じです。もし本当に勉強が原因なのであれば、勉強が苦手で成績が悪い子から順番に不登校になるはずではないでしょうか。

もちろん、発達の特性上、苦手なものが多いとか、トラブルを起こしやすいといったケースはあります。そのぶん、乗り越えるのが大変な場合もありますが、だからといって「学校に行けなくても仕方ない」と思う必要はありません。あきらめなければ必ず乗り越える方法は見つかります。