世論調査の動向
内閣府の「家族の法制に関する世論調査〔令和3(2021)年12月〕」では、選択的別姓制度導入のための法改正の是非を聞いている。結果はこうだ。
現行の夫婦同姓制度の維持27%
旧姓を通称制度として設ける(現行夫婦同姓制度を前提)42%
夫婦別姓選択制度の導入29%
旧姓を通称制度として設ける(現行夫婦同姓制度を前提)42%
夫婦別姓選択制度の導入29%
これに対して、本年7月に、日経新聞などが実施した世論調査では、通称制度の選択肢を除いた選択的夫婦別姓について、69%が「賛成」、23%が「反対」で、自民党の支持層に限っても6割弱が賛成という。
なお、この法改正には女性が積極的で男性が消極的というイメージがあるが、性別よりもむしろ世代間で、若年層は賛成、高齢層は反対との差のほうが大きい。これは高齢層ほど現状維持の傾向が強いこともあるが、何よりもこれから結婚する当事者である若年世代の意見が、より重視されるべきではないか。
現在の少子化問題は未婚化問題に起因する。
男女の所得格差が大きかった時代には、女性にとって結婚が社会的地位向上の重要な手段であり、夫の姓になることはメリットが大きかった。しかし近年は、若年層の女性と男性との給与差が縮まる傾向がある中、女性にとって結婚することで失う自由というコストも大きくなる。平等であるべき結婚なのに、なぜ女性の95%が姓を変えなければならないのかという疑問が生じたとしても何も不思議ではない。
保守層にとって伝統的な家族の形骸化を危惧することは当然だろうが、ふるい家族制度に固守することで、新しい家族の形成が損なわれること、ひいてはそれが少子化に拍車をかけるのではないか、という視点も必要だろう。
娘に結婚して、子孫を残してもらえたら――。そんな気持ちがあるのなら、親世代が別姓選択制度の導入に関して妥協する懐の広さがあってもいいのかもしれない。