理子は父親に似たところもあって、もちろん顔以外ですよ、自分の考えたことに「ダメ」なんていったら、きっと余計反発するんです。

僕が西武の監督をしているとき、理子はアメリカに約4年間ゴルフ留学したんです。それも「日本でゴルフするとすごく高いから」っていって。親孝行でしょ。しかも信じられないぐらい田舎の大学で周りには山しかない。当然僕のことなんて絶対誰も知らない。普通、怖くていかないですよね。その留学への決断をしたのも理子だし、帰国してからプロ転向を決断したのも理子自身です。理子にはいわなかったけど、本当はずっとプロゴルファーになってほしかった。なってくれて涙がでるぐらいうれしかった。

ゴルフは野球と違って自分が審判です。そういう意味でゴルフは教育にとってもいいスポーツですね。僕に頼らなくても理子はずっと自分で自分のことを審判してきたんです。

理子の結婚相手がどんな人か。特に意識はしていなかったけど、サラリーマンみたいな人とは結婚しないだろうというぐらいの予想はあったんです。子どもなりに父親の知り合いとか、仕事上もいろんな人を見る機会も多いから、理子と同じ世代の男というのは物足りないだろうなとは思っていた。

ただ、まあ僕の希望をいえばね、俺と性格の合う……いっしょに飲める人をね、連れてきてくれたら一番よかったかな。

理子があいつを連れてきたとき、正直なところ「あがぎゃぐわ、こいつかぁ……」と思ったものです。結婚は3回目だというし、僕と4歳しか違わない。冗談でですが、おまえ生命保険入っておけよ、と念を押したこともあります。まだ新居には行ってません。マンションの1階までは行きましたけど、途中で帰ってきちゃった。だけど、理子の決めたことはいままで通り信頼しています。理子、結婚おめでとう。

親はみな、子どもがどんな男を連れてこようと信用するしかないんですよ。時期をみて、2人の新居に行ってやろうかな、といまフト思ったんですが、やっぱりまだ早いかな(笑)。

※すべて雑誌掲載当時

野球解説者 東尾 修
1950年、和歌山県生まれ。68年西鉄(現・西武)ライオンズにドラフト1位指名で入団。パ・リーグ、球界を代表する投手となり、引退後は監督となって2度のリーグ優勝に導く。2010年野球殿堂入り。
(構成=中島みなみ 撮影=岡本 凛)
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