日本の「すごいおもてなし」の本当の評価

東京五輪を招致するプレゼンテーションの場で、滝川クリステル氏が発信した「おもてなし」は、瞬く間に流行語となった。現在は当時ほど意識されることはなくなったものの、コロナ禍を経て訪日外国人観光客数が2500万人超まで回復する中、依然としてわが国のおもてなしレベルは世界に冠たるレベルだと認識されている方も多いだろう。

しかし意外なことに、グローバルな観点から見ると、日本の観光サービスレベルは驚くほど国際的な評価が低いのだ。

事実、世界経済フォーラム(WEF)による2024年最新版の「旅行・観光開発ランキング」において、日本は総合評価こそアメリカ、スペインに次いで世界第3位の地位にあるものの、個別項目でみると、「観光サービスとインフラ」は2.93ポイント。当該項目においてアメリカとスペインがいずれも5.46ポイントであったことを鑑みると、明らかに大差で劣後していることが分かるだろう。

この差は、接客スタッフに言葉の壁があったり、インフラにおいて多言語対応が充分に整備されていなかったり、といった要因も考えられるが、わが国と諸外国における「サービス」に対する認識のギャップにも原因があるものと思われる。

大阪の古い飲み屋街に立つ外国人旅行者
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即興的・個別対応のサービスが「高品質」

わが国の「おもてなし」は、総じて細やかで丁寧、かつ平均的に高水準であるが、それらは一般的に「マニュアルに規定された一律対応」が基本であり、そのマニュアルに記された範囲を超えた、個々の顧客の特別な要望には対応しきれないことが多い。

したがって、何かしらイレギュラーな対応を依頼するとなった場合は「規定にないから」「本社に確認をとらないといけないから」等の理由で断られたり、柔軟に対応してくれなかったりすることもある。

一方で諸外国における「高品質サービス」とは往々にして「顧客毎にパーソナライズされた特別なサービス」が提供されるものと認識されている。例えば特定の食事のリクエストや、特別なアメニティの提供、サプライズで○○をすぐに用意してほしい、といった形で、その場の状況や気分に応じた即興的かつ個別対応のサービスが求められ、それらに確実に対応できることこそが高品質サービスの証なのだ。

その点において、わが国の「おもてなし」は悪く言えば「おしなべて高水準だが、形式的かつ作業的」であるため、柔軟性に欠けると捉えられ、十分な満足が提供できていない故の低評価である可能性が考えられる。