新総裁に求められる「錦の御旗」
さて、大手メディアが公表したがらない、この政党支持別の世論調査データに基づく調査結果を見ると、自民党総裁選挙にも違った景色が見えてくることになる。
仮に、内閣支持率及び自民党支持率が圧倒的に高い場合、上述のような総裁選挙の仕組みを反映して、自民党所属国会議員らは党内政局上の都合のみで自分たちの総裁を決定することができる。自民党支持者の論理だけなら、上川氏、石破氏、河野氏、高市氏の上位陣から誰を選んでも党員からの支持率に大差ないため、後は議員同士の好き嫌いと利害調整次第ということになるからだ。
しかし、現状のように、内閣支持率及び自民党支持率が低い環境では状況が異なる。次期総選挙での当選がおぼつかない選挙に弱い国会議員たちの気持ちは浮ついている。仮に岸田内閣継続または党内受けのみの新総裁を擁立し解散総選挙に突入すれば、野党による政権交代まではいかないが、脆弱な地盤しかない国会議員の落選することになる。まして、地元には落選した自分の議席を狙う地方議員達が順番待ちをしているケースもあり、その次の選挙での復活も必ずしも保証されていない。
そのため、それらの落選に怯える国会議員たちは、自民党支持層を維持しつつも、野党からも一定の支持を奪える新総裁及び「錦の御旗」となる政策を求めることになる。
東京15区補選で明らかになった「自民党支持層の本音」
一体、野党支持者まで糾合する新総裁候補者は、いかなる公約を掲げて自民党総裁選挙に臨めば良いのだろうか。実はその答えは自民党が不戦敗した東京15区の補欠選挙にあった。
東京15区の補欠選挙は自民党の柿沢未途氏の「選挙とカネ」のスキャンダルが原因で発生した補欠選挙だ。それ以前の自民党衆議院議員であった秋元司氏も収賄容疑で逮捕された自民党にとって最悪の選挙地合いの場所である。今回の補欠選挙では自民党公認候補者すら立てられず、乱戦を制した立憲民主党(+共産党)候補者に不戦敗を喫することとなった。
しかし、この東京15区の選挙は自民党公認候補者が存在していなかったことで、自民党支持層の本音がくっきりと表れることになった。NHK出口調査によると、同選挙で2着であった無所属・須藤元気氏、3着であった日本維新の会・金澤結衣氏、4着であった日本保守党の飯山陽氏はいずれも自民支持層に食い込んだが、その3名全員が選挙公報を含めて「消費税減税」を全面に打ち出す選挙戦を展開していた。
東京15区の補欠選挙は記録的低投票率であったことに鑑み、これが都市部における自民党の岩盤支持層の本音だと捉えることもできる。つまり、自民党支持層は、実は消費税率維持・引き上げに強い拘りはなく、むしろ減税を支持していたことになる。