食事は「栄養素を接種する行為」

まず食事について。

僕はあまり食に対する欲求が高くはない。イタリアから帰国すると、「日本に帰ってきて何が食べたいですか?」と聞かれることもあるけれど、僕の答えは決まって、「とくにありません」だ。

考えるのが面倒だからそう言っているのではなく、本当に、「これが食べたい」というものがほとんどない。

むしろそれより、自分の身体、アスリートとして求めるパフォーマンスを発揮するための栄養素を摂取することが、食事の目的になっている。

おいしいものが食べられないことや、味付けの不満よりも、必要な栄養が摂れないことのほうがストレスになる。

アスリートの場合、競技特性や年齢、体組成や何を求めるかによって必要な栄養素や摂取量は変わってくる。

学生時代、アンダーカテゴリーの日本代表や、シニアの日本代表に入ってからも、栄養講習を受けることはあった。

プロになってからは専属の管理栄養士にサポートしてもらっている。

まずシーズンに臨むにあたって、何を目標とするか。そこに向かってどんな食事をすればいいか、栄養素をどれだけ摂取すればいいか、そのためにはどんな方法があるかということをアドバイスしてもらっている。

「毎日同じメニューでよく飽きないね」と言われる

イタリアでは基本的に自炊がメインだ。外食では摂れる食材や栄養素に限りがあるからだ。

たいてい朝食は、ごはんと目玉焼き、フルーツとヨーグルト。最近はたんぱく質を摂取するために冷凍したサラダチキンをつけることもある。

昼食は、練習の合間になることも多いので、チームのレストランへ行き、パスタと肉か魚のメイン料理にサラダを摂っている。

練習後の夕食は、ごはん、野菜をたくさん入れたスープ、肉か魚をグリルしたもの。たんぱく質の量が足りていなければスープの中に鶏肉を入れたりするし、寝る前には補食としてヨーグルトを摂取したりすることもある。

ごはんや食材の量もどれだけ食べたかが大切なので、野菜を切るときは数を数えているし、ごはんも炊飯器の横にクッキングスケールを置いて、必ず計測している。

イタリアは野菜や果物の種類は豊富で、材料には困らない。

でも、なかなか手に入らなかったり、自分で料理するのは難しかったりする食材もある。とくに植物性たんぱく質は摂取しづらく、サラダを食べるときに豆を入れる程度だ。

そのぶん日本にいるときは納豆を食べたり、動物性たんぱく質でもアミノ酸スコアが優れた卵を卵かけごはんで食べたりすることもある。

フルーツや野菜もできるだけいろいろな種類を摂取するようにしていて、自分では満足した食生活ができているけれど、人から見ると、そんな生活も不思議に映るらしい。

「よく毎日ほぼ同じメニューで飽きないね」

そう言われることにも慣れてきた(笑)。

それでも近頃は、イタリアで外食をするときに、以前よりも本当においしいものを食べる喜びもわかるようになってきた。

僕にとってはすべてが充実した食生活だ。