※本稿は、笹本裕『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋)の一部を再編集したものです。
昨日までいた人が今日はもういない
最初の5週間は「リストラの5週間」でした。
当時のCFOやCEOも初日や2日目にいなくなりました。
Slackには全社員がメンバーとして入っています。すると、Slackに表示されるメンバー数が「あれっ? 7800人くらいだったのが3000人に減っちゃったぞ」となったり、「あ、今週は100人減った」「また100人減った」となったりするのです。
「え、いまは何人だっけ?」「いま、どうやら3000人を切ったぞ」みたいなことの繰り返し。毎日、毎週のようにSlackの人数が減っていくのを見てきました。
ちなみに2023年の1月に、Slackを全部リフレッシュしました。スレッドがあまりにもたくさんあって、みんなが自由に会社への批判なんかを書き込んでいたからです。イーロンが「一度全部きれいにする」と言って立て直しをしました。
会社に残るかどうかはワンクリック
おそらくイーロンには「人員をこれくらい減らしたい」という目安があったのだと思います。
一度大きなリストラをやったのですが、その数字に満たなかった。そこで、自主退職を促していきました。
その促し方もシンプルなものでした。メールでフォームが送られてくるのです。そこには「24時間以内にこのGoogleフォームで『残る(Commit)』を選択してくれ」と書いてあります。フォームに飛ぶと「残る」というボタンがあって「これを押してくれ」というわけです。そして「24時間で締め切るからね」と言います。
これはこれで、すごい決断の求め方だなと思いました。「残るやつはそれを押しなさい」と。
「24時間経って押していなかったら、あなたは自主退職すると申告したことになるからね」という内容なわけです。社内では「どうするの? 押す? 押さない?」みたいな会話が飛び交っていました。
まるで韓国のドラマ『イカゲーム』のようでした。タイムリミットがあるわけです。