「涙液分泌減少症」とか「乾性角結膜炎」と呼ばれていた疾患が、どのようなものかご存じだろうか。1980年代後半から一般に浸透した「ドライアイ」がそれである。ただ今、患者は1000万人とも、それ以上ともいわれている。
ドライアイであれば、患者は「眼が乾く」を主訴として眼科を受診しそうだが、実際にはそういった患者は少ない。多くは「眼が疲れやすい」という眼精疲労を訴え、この中の60%の人がドライアイと診断されている。そのほか、「眼がゴロゴロする」「眼が痛い」「眼が赤い」「なんとなく不快感がある」「光を見るとまぶしい」、そしてついに「眼が乾いた感じがする」の症状が出てくる。
ドライアイは涙の分泌量が減少したり、涙の質が変化して眼の表面の健康を保てなくなる病気だ。放置しておくと視力減退の原因にもなるので、症状が気になる場合は眼科を受診すべきである。
涙の分泌量が減る原因は数多い。涙は涙腺などでつくられるが、その涙腺に炎症が起きたり萎縮したり、自己免疫疾患(シェーグレン症候群)にかかったりすると涙の量は減少する。このほか、コンタクトレンズの使用、ストレス、睡眠不足、薬物の副作用などでも減少する。
また、涙自体は充分に分泌されていても、パソコン作業などでまばたきの回数が減り、涙が眼の表面に行きわたらないときもドライアイになる。
根本的な治療法がないので、上手に付き合っていくことが大事である。まず考えられるのが、目薬で涙を上手にコントロールする方法。最も良い目薬を選ぶには、次の3点を守ったドライアイ専用の目薬に着目することだ。
(1)「涙タイプ」
(2)「ヒアルロン酸ナトリウムを配合している」
(3)「防腐剤は入っていない」
この目薬をこまめに点眼する。
パソコンが原因と思われる場合は、目薬の点眼のほかに、「パソコン画面の凝視→まばたき回数の減少→眼が疲れる」という“悪のサイクル”に入らないような環境対策も重要である。
(1)部屋の明るさはパソコン画面より明るくする。
(2)室内を乾燥させすぎない。
(3)パソコン画面と眼線の高さは同じではなく、少し眼線を下げるくらいの位置に画面をセットするのがベスト。
(4)少なくとも1時間に10分程度は休む。
(5)休憩中は眼を閉じているのがベスト。
この5点を積極的に行うだけでも、これまでのドライアイがウソのように回復して、眼の調子が快適になる。
食生活のワンポイント
●食生活のワンポイント
外界の情報のうち、眼からの情報は80%を占めている。それほどに重要な眼なので、栄養的にもしっかりバックアップすることを忘れてはいけない。
●ビタミンA(&ベータカロチン)
ビタミンA不足が原因の病気として知られるのが夜盲症だ。明るさや暗さを感じとるのは眼の網膜の働きだが、ビタミンAが充分あると疲れ眼や視力の低下を防ぐなど、眼を健康にしてくれる。ビタミンA(&ベータカロチン)の多い食材は、レバー、牛乳、卵、うなぎ、焼きのり、にんじん、小松菜、ニラ、ブロッコリー、トマトなど。
●ビタミンE・C
ビタミンEは血液の流れを良くし、血管の動脈硬化を防ぐ。抗酸化ビタミンなので老化の予防にもなる。また、ビタミンCと一緒にとると、壊れたビタミンEをしっかりと修復してくれる。ビタミンEを多く含む食材はアーモンド、キウイフルーツ、たらこ、ピーナツなど。ビタミンCの多い食材はブロッコリー、にがうり、レモン、いちご、小松菜、大根など。
このほか、カルシウムは強膜(白眼)を強くし、カルシウムの吸収はビタミンDがアップしてくれる。