慣れれば便利だが、慣れるまでが大変?

えきねっとはサービス開始から長らく、ネット上で予約・決済した後に、みどりの窓口か自動券売機できっぷを発券する必要があった。一応、モバイルSuica特急券のサービスが2008年3月に始まり、タッチだけで新幹線に乗車できるようになったが、現在2600万枚以上を発行するモバイルSuicaが、まだ約74万枚程度の「ガラケー時代」であり、一部の新しもの好きやヘビーユーザー向けのサービスにとどまっていた。

チケットレス化は2010年代半ば、在来線特急から始まった。成田エクスプレスには2010年に「えきねっとチケットレスサービス」が導入されていたが、2013年に運行開始した高崎線特急「スワローあかぎ」以降、全車指定制の在来線特急へと広がった。2019年にはこれら列車のチケットレスサービスに対応した「えきねっとアプリ」が公開された。

新幹線では前述の「モバイルSuica特急券」が長らく役目を果たしたが、2020年3月にサービスを終了。通常のSuicaに加え、PASMOやICOCAなど全国共通カードで利用できる「新幹線eチケットレスサービス」に移行した。

これはえきねっとで購入時に所有するICカードのIDを入力すると、そのカードをタッチするだけで乗車券・特急券として利用できるサービスで、駅できっぷを発券する必要がないため慣れれば非常に便利だ。

だがICカードの裏面右下に記載されたID、モバイルSuicaでは画面をタップして表示しなければわからない英数字の羅列を探して入力する必要があり、それだけで面倒と感じる人もいるだろう。

ただJR東日本の決算資料を見ると、えきねっと利用者・チケットレス利用者は(世間の不評のわりには)意外と多いようだ。

分割民営化の縦割りの弊害がデジタル面にも

JR東日本は新幹線のチケットレス利用率の目標を2027年度に75%としており、実績値は2023年度末時点で56.4%だ。えきねっと取り扱い率も目標65%に対し、昨年度末で55.2%まで来ている。これを多いと見るか少ないと見るかは議論があるが、一定のシフトが起きているのは事実だ。

しかしみどりの窓口7割削減の前提のひとつがチケットレス利用率7割だったとすれば、窓口削減率が5割強、チケットレス使用率が5割強の現時点で混乱が生じるのは、ロードマップ自体に問題があったことになる。

JR東日本がオンライン化・チケットレス化に注力したのは、広く見ても2010年以降、本格化という意味では2019年以降のことである。そうなると、みどりの窓口が中心だった時代が約40年(1965~2005年)、指定席券売機が急速に普及したのが15年(2005~2020年)、チケットレス化を強く促している5年(2019年~2024年)となる。

しかも、みどりの窓口にさえ行けば考えずとも最適な回答を得られた時代とは異なり、今のさまざまなサービスは利用者がそれぞれ選択し、使い分けなくてはならない。またJR東日本、JR東海、JR西日本がそれぞれ予約システム、利用方法を持っているように、分割民営化の縦割りの弊害がデジタル化で余計浮き彫りになっている。