「一斉の夏休み」を最初に始めた業界

少なくとも新聞紙上で確かめられる限り、こうした「一斉の夏休み」は、いまから67年前、1956年に始まる。

同年7月31日の読売新聞朝刊は、「労使一斉に夏休み」という見出しで、日産自動車の全従業員6000人が、前日の30日から8月4日まで夏休みに入ったと伝えている。

記事では、「自動車工業は流れ作業のうえ、最近オートメーション化が進んだので有給休暇をバラバラにとる代りに一番暑い盛りに一斉に休み、夏の過労防止とオートメーション下の生産性向上の一石二鳥をねらったもの」(原文ママ)と報じている。

日本では初の試みだとして財界が注目している、と記事は結ぶ。

いまとなっては、自動車業界がゴールデンウィーク、お盆休み、そして年末年始に一斉休業するのは珍しくない。

その習慣は、戦後、それも高度経済成長の入り口で決められたのであり、労働者側と使用者側が、みんなで一度に休もう、との狙いから始まったものだった。

「盆と正月」は高度経済成長期の呪縛

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」ほどではないものの、みんなで一度に休もうとしなければ踏ん切りがつかない、そんな呪縛は、ここがスタートなのである。

いまのわたしたちが、長い休みを取りにくい背景がここにある。

「夏の過労防止とオートメーション下の生産性向上の一石二鳥」という大義名分がある以上、なかなか夏休みを分散させるわけにはいかない。

第3次産業(非製造業、広義のサービス業)に従事する人の割合は、2010年に70%を超えてから増え続け、2020年時点では73.4%、つまり、ほぼ4人のうち3人にのぼっている(*7)

すべてのサービス業とは言わないものの、こうした人たちの多くは、「盆と正月」すら休めない場合も多く、それ以外の時期に長く休むのは、さらに難しい。

シルバーウィークと合わせて2週間休もう、などというのは、たとえワーケーションやラーケーションを組み合わせたとしても、夢のまた夢なのだろうか。

(*1)「世界の祝祭日」日本貿易振興機構(ジェトロ)
(*2)「エクスペディア世界16地域 有給休暇・国際比較調査2022発表!」エクスペディア、2023年4月27日配信
(*3)「令和5年版高齢社会白書」(P20)
(*4)「令和5年版高齢社会白書」(P24)
(*5)「世界19ケ国 有給休暇・国際比較調査2018」エクスペディア、2018年12月10日配信
(*6)「学校を休んで旅行してOK! 子どもと一緒に過ごす新たな休暇制度『ラーケーションの日』 導入する自治体が相次ぐ背景は?」ABEMA TIMES、2023年8月30日配信
(*7)「令和2年国勢調査 就業状態等基本集計結果 結果の概要」2022年5月27日公表

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