「AIですべて解決」とはならない
MLBでは2026年からAI審判を導入する。
この背景には、全30球団の本拠地球場に「ホークアイ」を基幹とするトラッキングシステムが配置され、投球、打球だけでなく攻守の選手の動きもオンタイムで捕捉できるデータ解析ツール「スタットキャスト」が完成したことがある。
これは基本的にサッカーやテニスの「VAR判定」と同様の技術で、高速で移動する投球、打球、選手の動きなどを、人間の目では捕捉できないレベルで記録し、瞬時に判断することができる。
このように書くと「人間の審判の出来が悪いから、AIに置き換えるのだろう、さっさと人間の審判をやめてAIにすればいい」と言う人が出てくるが、そうではない。
AI技術の導入は、高度な判断が求められる現代のスポーツにおいて、審判の正確なジャッジのための「判断材料」を提供するために行う。
高度なAI技術は、競技について十分な知見を有する審判が使いこなすことで、いきてくるのだ。AI技術の導入後も、試合のジャッジを審判が行うのは変わらない。
NPBでも今季から全12球団で「ホークアイ」が導入されたが「スタットキャスト」のような12球団を統合したシステムの構築はまだ先になるだろうが、早晩、AI技術を導入することになろう。
つまるところ贔屓のチームだから批判する
そもそも、なぜ審判を批判するのか。多くの人は「公明正大なジャッジをしてほしい」と願って、審判を批判しているわけはない。
審判のジャッジを批判する人の大部分は「自分が贔屓にするチーム、選手に不利な判定をされた」ことから批判しているのだ。
例えば、自分の贔屓のチーム、選手に有利になるような「疑惑の判定」があったときに、これらの人は「黙っている」あるいは「ラッキー」とか「儲けた」とか言う人がほとんどで「おかしいじゃないか」と声を上げる人がどれだけいるだろうか。
本当にそのスポーツの健全な発展を願って審判を批判しているわけではないのだ。
こうした人の多くは「人間の審判をクビにしてAI審判にすべき」と言っているが、AIが完全導入されたとしても、際どい判定で、贔屓チーム、選手に不利なジャッジになれば「機械に何がわかる」「AIで人間の動きがジャッジできるはずがない」と、文句を言う対象が変わるだけだ。