不動産価格が上がり続ける中、何を基準に住まいを探せばいいのか。不動産事業プロデューサーの牧野知弘さんは「人の出入りが激しい街、つまり新陳代謝が活発な街は、今後資産価値が上がる可能性が高い。この新陳代謝で比較すると、首都圏1都3県でも明暗が分かれる」という――。
市川駅近くの展望台からの眺め
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地価が上がっていく街の「法則」

全国各地で地価の上昇が話題になっている。今年の公示地価の発表にあたっては、全国住宅地の地価上昇率100位ランキングで千葉県がちょっとした話題になった。前年は上位100位を札幌市や恵庭市、千歳市などの各拠点ですべて独占され驚きの声が広がったが、今年はこのランキングに千葉県勢が20拠点もランクインしたのだ。

具体的には市川市および流山市から各8拠点、柏市2拠点、我孫子市1拠点であった。市川市も流山市も東京への通勤圏であることに加え、行政による豊富な子育て支援策が子育て世代の支持を取り付けたと言われる。

不動産業に長く携わっていると感じるのが、不動産が社会生活を営むための重要なインフラであることだ。人は暮らすために家を確保する。多くのサラリーパーソンは働くためにオフィスというハコの中で勤務する、商業施設で買い物をし、飲食を楽しみ、ホテルに滞在し、寛ぐからだ。

そして街の経済が発展し、地価が上昇するには一定の法則があることに気づかされる。街というプラットフォームで人の出入りが多い街ほど街に活気が生まれ、不動産が活発に動き、結果として地価が上昇するということだ。

首都圏の「新陳代謝」を比べてみた

街にやってくる人が多いと、住宅の売買、賃貸借が活発になる。転入してきた人は街を探検し、たくさんの買い物をする。飲食店に顔を出し、お気に入りの店を見定める。街を出ていく人も多ければ、人の入れ替わりが起こり、商店主や大家も新しいトレンドに敏感になる。

これを私は「街の新陳代謝」と呼んでいる。一定数の人が常に「入れ替わる」状態にある街が、経済が成長し、結果として地価、資産価値が上がるのだ。

多くのお客さまやメディアからどのエリア、街の資産価値が上がるのか、とよく問われるのだが、実は新陳代謝が活発な街であるかどうかがその解答だ。そこで今回、首都圏(1都3県)における街の新陳代謝状況と地価の変動率について主要な街で比較を行ってみた。結果は驚くべき正確さで街の状況、今後の姿を映し出すものだった。表を参考にしながら順に解説しよう。

分析にあたっては各市町村別に転入者と転出者の合計を新陳代謝数とし、2023年中の数値を集計、23年1月1日の人口に対し、どれだけの新陳代謝が行われたかを代謝率とした。また公示地価は各自治体の平均値で変動率と1平方メートル当たりの単価(千円単位)で示した。