プチプチに最も適した材料は

材料と言えば、プチプチときってもきれない関係にあるプラスチックがポリエチレンです。川上聰が塩化ビニールの原料メーカーを退社して、川上研究所を設立した背景には、ポリエチレンの発明がありました。プチプチを開発するにあたり、現時点で考えられる最も適した材料はポリエチレンであるとの確信が川上にはありました。塩ビメーカーに在籍していては、ポリエチレン製品を手掛けられないとの判断から、退社を決意したと聞いております。

話を半球という形状に戻しましょう。当初理想的だと思われた半球形は、三つの点で現実的でないことが、試行錯誤の中で明らかになってきました。

第一に、金型にたくさんの凹部を切削加工することにより作るのですが、半球形の穴はあけにくい(コストがかかる)。

第二に、金型の凹部にくうきの吸い口を設ける必要がありますが、目詰まりした際に交換できるプラグ方式を採用するとなると、半球は適した形状と言い難い。

第三に、できあがったプチプチに「ボリューム感」が感じられない。

特に三つ目は致命的で、早期に「半球から円柱への回帰」がなされたと聞きます。

プチプチがつくられている工場の様子
撮影=福田諭
プチプチがつくられている工場の様子

最終的に生き残ったのが現在の形

話はゴムベルト時代に戻りますが、円柱形プチプチの粒の大きさについては、数多くの試作と市場サウンドがなされました。直径と高さの関係は、熱成型の要請から、だいたい決まってしまいます。ですから、プロポーションはほぼ同じ相似形で、超小粒から超大粒までのプチプチが工場から出ていったわけです。恐らく、日本以外の各国においても似たような試行錯誤がなされていたに違いありません。そして最終的に生き残ったのが、直径約10ミリの略円柱形プチプチとなります。

各国とも同様の結果になっているところを見ると、ヒトの寸法(特に手の指の寸法)から、自然と決まってきたのではないかと思われます。

さらに、使用後の「プチプチつぶし」にも都合の良い寸法になっているのは、おもしろいことだと思います。「つぶされてナンボ」のプチプチの宿命でしょうか。

また粒同士の間隔も、金型製造の条件から、だいたい決まってきます。

ゴムベルト時代のプチプチは、粒同士の間隔が大きくならざるを得ませんでした。