我々の世代からしたらドラクエと言えばよもや知らない人はいないレベルのゲームである。ビアンカ・フローラ論争なんて説明しなくともわかってもらえる。

けれども、ドラクエを知らない世代がその記述を読んだときに、そのドラクエ狂騒曲に関する知識がないと、いまいち文章に入り込めず、そこで疎外されたと感じる。若い人たちから見たら、おっさんがなんか懐古に浸っとるわ、で終わってしまう可能性があるのだ。

つまり、本題に入る前にドラクエに関する説明が必要なのである。

ドラクエという大人気ゲームがあった。特に少年時代に発売されたドラゴンクエストIII、いわゆるドラクエIIIは、発売日には徹夜で並ぶ人たちで溢れ、不人気ソフトとの抱き合わせ販売や、ドラクエ狩りなど大きな社会問題を起こしたゲームでもあった。

こう記述することで、ドラクエという社会現象が読む人に共有される。そこでドラクエを知っているおじさん世代、という内輪が外部に解放されるのである。

ドラクエを知らない若い世代に疎外感を与えない

これは、ドラクエを知っている人からしたら何をいまさらな情報だし、読み飛ばされるんじゃないか、と考えるかもしれない。そうやって読み手の感情を想像して心配するのはとてもいいことだ。

pato『文章を書くときいちばん大切なものは、感情である。』(アスコム)
pato『文章で伝えるときときいちばん大切なものは、感情である。読みたくなる文章の書き方29の掟』(アスコム)

ただし、ドラクエの情報を知っていてもういちどドラクエの情報を読まされるストレスと、ドラクエの情報を知らずにドラクエに関する文章を読むストレスを天秤にかけた場合、やはり知らずに読むほうがストレスが高い。だから詳細な説明が必要なのである。これが内輪感の除去だ。

この記事は大きなバズを引き起こしたし、その感想を見ると「懐かしい、俺もビアンカとフローラで苦悩してその先に進めなくなったな」「わたしも、こんな残酷な選択があるか、きっと別の選択肢があるはずだと街をさまよった」という懐かしむ意見から、「ドラクエはやったことない世代だけど、おもしろかった」と知らない世代にまで楽しんでもらえた。

内輪感を除去し、あらゆる世代に照準を定めた結果だ。

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