いい文章を書くには、どうすればいいのか。『文章で伝えるときいちばん大切なものは、感情である。読みたくなる文章の書き方29の掟』(アスコム)を書いたライターのpatoさんは「人間にできて、AIにできないことは『苦悩すること』だろう。書くことは苦しい。だからAIにはやく仕事を奪われたいとさえ思う。だが、そうやって書いた文章にはまだ価値がある」という――。
ライターは「AIに仕事を奪われる職業」なのか
「生成AIが持つ無限の可能性」
そんな言葉がネットを中心に囁かれるようになってずいぶんと時間が経ったように思う。生成AIが無限の可能性を持つということは、それによって仕事を奪われる人にとっては無限の絶望があるわけだ。可能性のことを言われるたびにお前らは絶望しろと言われていることになる。ずいぶんなことだ。
僕自身、生成AIどんなものよ、と自分の同人誌において10本の記事を生成AIと書き比べてどちらが面白いか競ったことがある。2023年に書いた時点では、まだ生成AIが「おもしろ」をあまり理解していないようだったし、文体も生成AIのそれに近かった。
本来は、どちらが生成AIのものかわからない! となることを期待していたけれども、明らかに丸わかりで、同人誌の最後では僕の方から生成AIの文体に近づけていたくらいだった。早い話、こちらの命令の仕方も悪かったのだろうけど、生成AIの実力としては期待外れだったし、まだまだ書くことを奪われたりはしないな、という印象だった。
「はやく奪ってくれ」くらいに思っている
ただ、この事実を持って「生成AI、たいしたことないな」となるのは早計であることを理解している。生成AIは恐ろしい速度で進化している。すぐに「おもしろ」を理解し、文体もよりナチュラルになるだろう。人間が書いたのかAIが書いたのか分からない、すぐにそうなる。だから、この文章があっという間に色褪せてしまうことだろう。へえ、この時点ではこんな余裕ぶっこしてたんだとなること請け合いだ。
ライターは生成AIに仕事を奪われるのか。
そう問われれば、まあ、奪われるのだろう。ただ、正直に言ってしまうと、奪われたところでべつに構わない。はやく奪ってくれくらいに思っている。はやく僕たちを解放してほしいのだ。