静岡新聞は新知事の対応を「拙速」と批判
肝心の静岡工区の未着工の現状はいまも変わっていない。
川勝知事の後を受けた鈴木康友知事はさまざまな会見で、「スピード感を持ってリニア問題の解決を目指していく」と述べている。
それに対して、今回の特集企画で、静岡新聞は「事業前進へ積極姿勢 鈴木知事『巧遅より拙速』」と、何ともわかりにくい見出しをつけた。
「巧遅は拙速に如かず」とは、内容よりも迅速に物事を進めることを優先すべきという意味だ。そんな鈴木知事の姿勢を静岡新聞は「スピード感」はあっても、内容が雑でまずいと批判しているのだ。
鈴木知事の「スピード感」を強く印象づけたのは、6月18日にJR東海、山梨県と締結した調査ボーリングを巡る3者合意である。
静岡新聞はその合意が内容の伴わないまさに「拙速」と評価している。
果たして、その評価は妥当なのか。
懸念の「調査ボーリング」が一転容認された背景
川勝知事の時代、静岡県は「水一滴も県外流出は許可できない」として、「静岡県の水を一滴でも引っ張る山梨県内の調査ボーリングをやめろ」と主張し続けた。
ことし2月5日、静岡県は水資源保全や南アルプス保全など28項目を「対話を要する事項」としてまとめ、JR東海と協議を続けていくとした。
その28項目の1つに、「山梨県内の調査ボーリングをやめろ」も含まれていた。
「高速長尺先進ボーリング(調査ボーリング)が、静岡県境から山梨県側へ約300メートルの地点に達するまでに、その懸念の対応について説明し、本県等との合意が必要である」とJR東海に懸念への対応を求めていた。
つまり、山梨県内で調査ボーリングを行うならば、県境300メートル手前で静岡県の合意を得てからにしろ、と言うのだ。
山梨県の調査ボーリングは、静岡県境まで459メートルの地点で昨年10月から休止していた。300メートル地点までもうすぐだった。
JR東海の丹羽俊介社長は5月7日、調査ボーリングを20日から再開する考えを山梨県の長崎幸太郎知事に伝えた。
これを受けた県地質構造・水資源専門部会が5月13日に開かれ、「リスク管理ができている」などとして山梨県内の調査ボーリングを一転、認めた。
当時、川勝知事の辞職を受けた県知事選の最中だったが、調査ボーリング再開に向けて柔軟な対応を取った。
あとは新しい知事が「合意」をすれば、JR東海は晴れて、県境に向けて、調査ボーリングができることになった。新たに就任した鈴木知事は6月18日、予定通りに、「山梨県内の調査ボーリング」に合意した。