岐阜にイスラエル人が訪れるワケ

一般に「飛騨高山」と呼ばれる地域は、岐阜県北部(飛騨地方)の高山市にあたります。高山市には昔ながらの木造建築が立ち並び、伝統的な商家の街並みが保存されています。老舗の商店、蔵元、温泉宿など、まるで京都の一角に来たかのような趣のある建物が見られます。

これらの商家町の歴史は江戸時代にまで遡ります。当時は木材資源が豊富であり、優れた木工職人も多数いました。現在でも彼らの作品は、立ち並ぶ木造建築や、町の随所に見られる木彫りの彫刻や装飾として残っています。

人気の理由

外国でもよく知られた古くからの日本の伝統文化を味わえるとあって、飛騨高山は外国人がたくさん訪れる観光地となっています。そして、多言語で書かれた散策マップや標識が充実しているのも人気を後押ししています。

意外な点としては、近年の飛騨高山ではイスラエルからの外国人観光客が増えているそうです。これにはイスラエルの経済力が上がったことや、イスラエルから日本へのアクセスが便利になったことなど複数の要因が関わっているようですが、岐阜県があの杉原千畝ゆかりの地であるということも大きいでしょう。

高山市
写真=iStock.com/Colin13362
※写真はイメージです

3年で約7.6倍に増加

杉原千畝は第二次世界大戦中にリトアニアの日本領事館領事代理を務め、ナチスの迫害から逃れてきたユダヤ人に対して独断でビザを発行し、何千人ものユダヤ人の命を救った人物です。

岐阜県八百津町には「杉原千畝記念館」があり、多くのイスラエル人がここを訪れています。そしてその際に彼らが訪れるのが、近隣の高山市や白川村なのです。

岐阜県では「杉原千畝ルート」という名称でこれらの名所を巡る観光ルートを設定し、海外に積極的に発信しています。高山市におけるイスラエル人の宿泊者数は、2013年時点では約2800人でしたが、2016年には1万人以上にまで増加しています。

杉原千畝記念館
杉原千畝記念館(写真=Monami/CC-BY-SA-3.0-migrated/Wikimedia Commons
注目ポイント

飛騨高山は街並みを散策するだけでもワクワクする、日本人にも人気の観光地です。

今ではすっかり見なくなった木造建築の建物が、往年の雰囲気を残したまま整然と並んでいます。

朝に早起きして朝市に行けば新鮮な果物や野菜、地元の伝統工芸品などが買えますし、蔵元に行けば多種多様な日本酒が試飲できます。また山車が練り歩く高山祭も魅力の一つで、これも江戸時代にまで遡る長い歴史を持っています。疲れたら昔ながらの温泉宿でほっと一息つけます。

このような「イメージしていた日本」をそのまま享受できるのが、飛騨高山が愛される理由でしょう。