コアゲーマーは「困難を克服する達成感」を求めている

②:全世界に増えるコアゲーマー

『エルデンリング』の表面的に大きな特徴は、その難易度が非常に高いことである。

『エルデンリング』はいわゆるアクションRPGと呼ばれるジャンルのゲームで、主人公は剣や盾、魔法といったファンタジーではお馴染みの装備を活用し、「狭間の地」と呼ばれる世界を冒険する。しかし、そこで出会う敵は、いずれも一筋縄ではいかない強敵だ。敵の攻撃を数発まともに受ければ死亡してしまうので、プレイヤーは敵の攻撃を見切り、少しずつダメージを与えていく。これがアクションゲームに慣れている人でも至難である。

本作のディレクター、宮崎英高は本作のコンセプトに度々「困難を克服する達成感」を掲げている。これは本作の宮崎英高が、最初にオリジナル作品として手掛けた『Demon's Souls』から一貫した姿勢だ。

『エルデンリング』には強敵を前にしても、仲間を呼んだり、冒険して武器を強化するといった様々な手段が用意されているものの、それでも開発者が自ら「困難」と認める程には困難で、一筋縄ではいかない。特に3Dのアクションゲームに慣れていない人は、クリアする前にプレイを中断する人も少なくない。

※https://www.famitsu.com/news/202402/22335199.html

また今作はゲームそれ自体のみならず、作品を取り巻く世界観もまた「困難」だ。アメリカ有数の作家、ジョージ・R・R・マーティンとのコラボレーションによって生み出された本作の世界観は、残酷かつ冷徹なダークファンタジーで、しかも断片的に語られる物語や謎めいた設定が、作品への理解をより難しくする。強敵を倒したあとにも「困難」は続くのである。

難しい、でも面白い

一般的に、難しいゲームは売れにくいと考えられてきた。単純に考えて、易しいゲームはどんなプレイヤーでもクリアできる。言い換えればどんなプレイヤーでもお金を出し、「商品」としてゲームを買っても、損をしない。対して難しいゲームは、ゲームに慣れたプレイヤーでなければクリアできなかったり、少なくとも創意工夫を求められる。故にプレイヤーは「商品」に対して不満を抱いたり、購入を躊躇する可能性が高まる。

にもかかわらず、『エルデンリング』は売れた。仮に最大公約数的なゲームでなくても、その内容や品質がきちんと優れている限りにおいて、ゲームは「商品」としてもちゃんと売れ、しかも支持されるという実例の一つだ。

こうした背景を支えているのが、ゲームによく精通したコアゲーマーと呼ぶべき客層だ。1983年にファミリーコンピュータが発売され、コンソールゲーム文化が本格的に花開いて40年以上経過するが、その中でゲーム人口は増えながらも成熟し、ゲームに関する深いリテラシーと鋭いパッションを持つコアゲーマーが増えた。『エルデンリング』の大ヒットは、こうしたコアゲーマーの存在の大きさを裏付けている。

なお、あくまでコアゲーマーが増えているというだけで、より気楽に、短時間だけゲームに触れることを好んだり、友達とのコミュニケーションや何気ない日常を楽しむ目的にするゲーマーも、それ以上に増えつつある。コロナ禍で大ヒットし、4000万本売れた『あつまれ どうぶつの森』はその証左といえる。