サイト費用を10分の1に抑えた方法とは

MOBIFYのクライアントにはEコマース企業も多い。使用する画像点数が多くなる通信販売サイトでは、とりわけモバイルファーストの効果が高いということだ。さらに、注文や問い合わせについても、電話よりモバイルサイトからのほうが気軽だと考えるカスタマーは着実に増えつつある。商機の獲得や通信費の節約といった観点からも、大きなメリットが得られるといえる。

たとえばMOBIFYを導入したあるEコマース企業の場合、「モバイルファースト」の実践により、これまで月間2万ドルかかっていたサイトのインフラ費用を、10分の1の2000ドルに圧縮することができたという。画像のデータ容量を抑えたり、サイト構造を効率的にしたりすることで、サーバー費などの節約に結びついた。

もちろん、通信販売を生業とする企業でなくとも、カスタマーとのコミュニケーションがより活発になることなどは、見逃すことができないメリットだろう。 「日本のある自動車メーカーには、グローバルで世界各地の拠点を結ぶイントラネットにわれわれのシステムを導入していただきました。その結果、全世界の従業員や家族からのアイデア募集などがとてもスムーズになり、より多くの声が集まるようになったと喜んでいただけていると聞いています」(ファレスキー氏)

大学の卒業旅行で行ったヨーロッパで、モバイル時代の到来を確信したのが起業のきっかけだった。

PCの前に座ってキーボードを叩くよりも、スマートフォンで指先を動かすほうが、気軽なコミュニケーションを活性化させるという好例だ。そもそも、PCを前提としているのは限られた先進国だけかもしれない。インドや東欧などの国々ではPCの普及率が低く、モバイルがネットにアクセスするための一般的なツールになっている。そして、日本でも利便性に優れたモバイルが急速に普及しつつある。

今後、日本から情報発信する企業も発想を大きく変えて、PCではなく、モバイルが中心という世界をイメージしなければならない。15年以上にわたるPC中心という発想を大きく変える必要があるということだ。

日本の現状では、モバイルといえば主にスマートフォンへの対応を指すが、すでに北米ではタブレットへの対応が進んでいる。10インチの「iPad」だけでなく、7インチの「Kindle Fire」や「iPad mini」など、サイズの異なる端末への対応も重要な課題だ。

サイト表示の最適化については、当面はすでに資産として存在しているPC向けサイトのコンテンツを、MOBIFYなどを使って効率的に最適化していくのが現実的な方法だ。次のステップとして、最初にモバイルサイトから構築して、それをPCやタブレットに最適化するということになる。

現在、日本ではMOBIFYの代理店であるドーモが『Domobi(ドゥモビ)』というサービス名で提供している。ドーモの代表の占部雅一氏は「日本においても『モバイルファースト』の流れは、女性サイトやEコマースのサイトで始まっています」という。「先行する北米の事例はすぐさま日本に表れます。今後投資すべきは、PCサイトではなく、モバイルサイトでしょう。この大きな変化を企業の経営陣は理解しないといけません」

起業して5年、まだ27歳と若いファレスキー氏。これからの目標について「たとえば、われわれのクライアント企業が運営するEコマースのサイトでは、2012年に90億円を超える売上がありました。今後はさらにモバイルファーストの理解を世界に広げ、より多くの企業の成功に役立ちたいと思っています」と話す。もちろん、クライアントの成功は自らの会社を発展させることにも結びつく。「われわれはモバイルファースト、そしてコンテンツファーストのスペシャリストです。より使いやすさにこだわったアプリやサービスを開発して、さらに飛躍していくことを目指しています。まずは東京とニューヨークに次のオフィスを構えたいですね」

「より使いやすく」というファレスキー氏の言葉は、そのままモバイルファーストの理念であるともいえる。カスタマー目線で自らのサービスや商品のあり方を見直すことができなければ、これからは生き残れない。幸い日本での変化はまだ起こり始めたばかりだ。「これまで、どうやってきたか」ではなく、「これから、どうすればいいか」を考えるしなやかな発想が、いま求められている。