自分でできる診断・テストはあくまで目安

ご自宅で可能な検査は他にも、東京都福祉局が提供している「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」や、日本認知症予防学会「認知症自己診断テスト」、iPhoneアプリの「認知症テスト Moffワスレナグサ(HDS-R)」などがあります。後者は長谷川式認知症スケール(HDS-R)です。

東京都福祉局の「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」(一部)

いずれもあくまで目安であり、医療につながるきっかけとして利用していただければと思います。

正確な診断には、神経心理検査、脳画像検査、髄液の採取などの専門的な検査を要します。特にレカネマブの治療を受けられるかどうかを決めるには、これらの検査は必須です。

アルツハイマー病の中核症状と周辺症状

Q.アルツハイマー病の具体的な症状は何ですか?

伊東大介『認知症医療革命 新規アルツハイマー病治療薬の実力』(扶桑社新書)
伊東大介『認知症医療革命 新規アルツハイマー病治療薬の実力』(扶桑社新書)

病識(病気の自覚)の有無以外にもアルツハイマー病を特徴づける症状があります。

アルツハイマー病の症状は大きく「中核症状」と「周辺症状」の二つに分けられます。中核症状は、脳の細胞が死滅したり、脳の働きが低下したりして直接起こる症状。一方、周辺症状は、ご本人のもともとの性格、環境、人間関係などが複雑に絡み合って生じる精神症状です。うつ状態、不安、焦燥、徘徊、興奮、暴力、不潔行為などが含まれます。

周辺症状は先行して中核症状があり、それに派生して起こります。それでは脳がダメージを受けて生じる中核症状とは具体的にどのようなものでしょうか。

中核症状には「記憶障害」「見当識障害」「処理能力の低下」「実行機能の低下」などがあります。一つずつ説明しましょう。