「いやです」と女性が拒んだら

この例に限らず、交渉事のほとんどは嘘をやり取りすることで成立します。国の外交、企業の契約、ゲームソフトの売買、男女の付き合い。どれも相手に「事実ありのまま」を伝えてしまっては交渉になりません。

気に入った女性をデートに誘い、お酒も入り、いい雰囲気になったとします。ところが、いざ押し倒そうとすると、女性はたいてい「いやです」と拒みます。その一言を真に受けて、「ごめんなさい」と手を引っ込めたらどうでしょう。ここは、一度拒まれても「君が好きなんだ。我慢できない」と迫るべきです。そうしないと、あなたは一生童貞のままですよ(笑)。

こんな実験結果があるそうです。アメリカの心理学者が、男子学生を使ってワインバーで女性をナンパさせたところ、ある条件を加えただけで「成功率」は3割もアップしたというのです。その条件とは、一緒にワインを飲んだあとで「実はそのワインには性的な興奮剤が入っているんだ。効果抜群だから、8割の人は耐えられないはず」と耳打ちすることです。

もちろん、実際に興奮剤を使ったわけではありません。それなのに大きな成果が出たのは、興奮剤のせいにして女性が学生の誘いに乗ったからです。つまり人間は、他人はもちろん自分に対しても嘘をつく。善悪とは関係なく、それは自然なことなのです。「嘘は悪」と思い込むことは百害あって一利なしです。まずは大人から、意識を変えてみたらどうでしょうか。

ソフトブレーン マネージメント・アドバイザー 宋文洲
1963年、中国山東省生まれ。北海道大学大学院へ国費留学するが、天安門事件で帰国を断念。学生時代に開発した土木解析ソフトの販売を始め、92年28歳でソフトブレーンを創業。2006年に会長を退任した。
(構成=面澤淳市(プレジデント編集部) 撮影=的野弘路 写真=AFLO)
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