とにかく飛行機の近くにいたい
福島県磐城高校2年生の芹澤崚さんはパイロット志望。高校入学時は、法政や桜美林といった、パイロットになるためのカリキュラムを持つ大学も視野にあったが、今は高校卒業後に合州国のコミュニティ・カレッジに留学し、向こうで航空大学に編入しようと考えている。
「やっぱりどこかで留学したいっていう願望があって。6歳でシンガポールに旅行したときから英語というか、いろんな国の言語が好きになって。中でもやっぱり英語が使えるようになれば、どこにでも行けると思って。コミュニティ・カレッジで2年間勉強しているうちに、パイロット以外の夢が見つかったり、自分の勉強能力が上がったりしたら、UCバークレー(注・カリフォルニア大学バークレー校。「TOMODACHI~」参加者が学んだ孫正義の母校)とかに挑戦して、自分の限界の突破というか、自分ができる範囲をどんどん広げていって、最終的にやりたいと思う職業に就ければと。今はパイロットになりたいと思うので、パイロットで人生がうまくいったらいいなって考えてます」
先ほど「具体的に、複数」と言われたので、こう訊いてみます。芹澤さんは、パイロットになれなかったときの保険は考えていますか。
「とりあえず飛行機とか航空関係の仕事をやっていきたいんで、整備士であったり、空港で働いたり、そういうのを考えてます。とにかく飛行機の近くにいたい。自分の人生の中におけるいろんな出来事って、無駄なものはけっしてひとつもないっていうふうに考えていて、何かしら自分に影響を与えてるんだって考えて生きてます」
ポジティブ・シンキングというやつですね。「TOMODACHI~」で合州国に行ったということは、向こうでそういう考え方もたくさん見ましたか。
「面白いと思いました。なんか、プラス思考でいい考え方だなと。自分自身がそうだからかもしれないけど(笑)。親には『現実も見ろ』とけっこう怒られるんですけど」
「TOMODACHI~」参加者300人は、ソフトバンクから iPad の貸与を受けている。連載第44回の多賀城編《http://president.jp/articles/-/8255》では、それを使ってドキュメンタリー動画を作成した高校生が登場した。芹澤さんは、文化祭で iPad と、その中にインストールされている映像作成ソフト iMovie を使ったという。
「自分のクラスで、映画の予告編みたいなのをつくったんです。ホラー映画とか、スーパーヒーローものとか。これがもう爆笑で、学年優勝しました(笑)」
HIS社員たちの前で披露されたいわき市のアピール、その中で使われたプレゼンテーション映像も、 iPad とその中にインストールされているアプリケーションを使ってつくられたものだ。合州国で同じ3週間を共有した高校生全員の手元に、今も iPad があるという意味は大きい。合州国から帰り、日常の生活に戻った高校生たちは、今も Twitter や LINE, Facebook を使って連絡を取り合っている。もちろんその中には他愛もないプライベートな話も多いのだが、「TOMOTRA」のような地域ごとの活動報告も少なくない。 iPad は回線を介して、間違いなく300人の高校生のインフラになっている。貸与ということは、いつかは300台の iPad をソフトバンクに返さねばならないのかもしれないが、今のところソフトバンク側からは貸与終了という通告は出ていない。