大人は知らないサーミ人

取材終了後のスナップ。

桜庭さんが話を聞いてみたいといった「ハブ獲り名人」のことが頭に残ってしまいました。試験勉強のときに、試験に関係ないことばが頭から消えないような感覚です。

桜庭「あっ、わかります。うち、サーミ人それだった。トナカイ放牧するサーミ人」

大人たちが「ラップ人」の名で学んだ北欧民族のことだ。「ジプシー」と呼ばれた者たちが自らを「ロマ」と名乗るように、蔑称のニュアンスを持つ「ラップ人」という呼称は、今の教科書では使われていない。教科書の中身——親子の間での常識や前提となる情報は、たったひと世代で変わる。

小室「親の代が知らない仕事って、子どもに話してあげれないじゃん。だからうちらの代でそういう仕事を知って、次の代に『あんな仕事がいいんじゃない』とか言えるといいんだよね。親が知らないと、子どもが『こういう仕事に就きたい』って言っても『?』ってかんじじゃないですか」

桜庭「うちの両親はどっちも大学行ってないんで、大学のことは、ほんとにわかんないから、学校を頼りにやっていくしかないんです。姉ちゃんのときとか、ほんとうに大変だったみたいで。『センター試験って何?』みたいなところから(話が)始まるから」

関口「うちの母ちゃんもAO、わかんなかった(笑)」

桜庭「子どものほうが、進路については詳しいみたいなかんじですよ」

最後に訊かせてください。大人の仕事の話を何歳ぐらいで聞くと、いい進路選択ができると思いますか。

桜庭「高校生がいちばんベストだと思います」

関口「わたしもそうだと思う」

小室「中学生のときは、あんまりまだ進路とか考えてないから。わたしも中学2、3年生ぐらいまで漫画家になるとか言ってましたから(笑)。高校入りたてのころがいいのかなあ。2年生の後半とかになっちゃうと、もう文理選択が決まってるから……」

桜庭「(進路選択の幅が)キツキツになっちゃってるよね」

小室「だから1年生の後半あたりがいいのかも」

桜庭「大学に入っちゃうと、学科がもう決まっちゃってるから、遅いってわけじゃないけど……」

もう、ハンドルが切れない?

桜庭「そう、そんなかんじがします。やっぱり高校生のときがいちばんいいのかな」

「TOMODACHIサマー2012 ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」参加者への取材をここまで続けてきて、プログラムの「一番人気」が、現地で働く日本人から仕事の話を聞くものであったことを、こちらは確信している。「TOMODACHI〜」に参加していない関口さんと小室さんからも、仕事をしている大人の話を聞きたいという具体的な思いがあることを確認できた。それは、いよいよ進路を自ら決めなくてはならない、ハンドルを切る直前の端境期にいる高校生たちの渇望と言ってよいだろう。学校側も外から人を招き、高校生たちが「職業の実際」を知る機会をつくっている。だが、「TOMODACHI〜」参加者が、一番人気のプログラムで得た興奮を語る表情を思い出すとき、こちらはこう思わざるを得ない。仕事をしている大人と高校生たちが直接語りあう「場」は、危険なほどに不足しているのだ、と。

次回は福島県いわき市に、6人の高校生を訪ねる。

(明日に続く)