遺児3500万人を抱えるアフリカには支援が必要
カストロさんには、出身のケンブリッジ大学と日本経済大学との交換留学制度で訪日し、2014年に育英会で研修、2016年に同会に就職した経歴がある。
「アフリカはさまざまな理由で遺児の多いエリアです。アフリカ連合の報告によると現在、アフリカ大陸全体では3500万人の遺児を数え、そのうち1100万人がHIVによる遺児だそうです。中でもウガンダは特にHIV遺児が多いんです。育英会が将来的な事業の拡大を見据えて取り組むべきはアフリカだったんです」
育英会は2003年に、HIV遺児に心のケアを施す施設「レインボーハウス」をウガンダに建設し、これがのちにあしながウガンダ事務所となる。2006年には同施設から1人の優秀な学生を早稲田大学に進学させた。これが「100年構想」の先駆けとなったのだった。
日本の「街頭募金」とは違うブラジルでの資金調達方法
ケンブリッジ大学でラテンアメリカの国際開発で修士課程を修めたカストロさんは、近年のブラジル経済の成長を追いながらこの国に可能性を感じて、育英会のブラジル法人設立に立ち合い、2020年にサンパウロに赴任した。
「あしながブラジル設立当初は100%育英会の資金で運営していましたが、現在は年間予算約127万レアル(約3860万円)のうち30%をブラジルでの寄付で賄っています。2026年までには予算の70%をブラジルで得られる寄付金で賄い、ゆくゆくは日本の育英会に還元する計画です。ロンドンのあしながUKはすでに育英会に資金を還元しているんです」
育英会の募金活動といえば人の行き交う駅前で行う学生募金で知られている。一方、ブラジルでは、他の慈善団体の活動を含めて、街頭募金を見かけることはない。
街頭での募金には治安上の不安があるのに加えて、近年キャッシュレス社会へと邁進するブラジル都市部では、小銭すら持ち歩かない人も少なくない。街頭募金が認知されていない事情を鑑みると、その効果は期待できないのだ。
であれば、あしながブラジルはどのように資金を調達しているのか?