自分の「怒り」に点数を付ける

【澤円】先に「怒りは消し去ることができない」という話がありました。つまり、うまくつき合っていくしかないということですよね。

【戸田久実】そのつき合い方でも大事なのが、「怒りで後悔しない」ことではないでしょうか。「あんなふうに怒らなければよかった……」「あのとききちんと怒ればよかった……」と後悔すると、精神的なストレスを抱え込んでしまいます。ですから、怒る必要がある場面では適切な表現で上手に怒る、怒る必要がないのなら怒らなくて済むようにすることが大切です。

【澤円】そう考えると、怒りに関して自分がどういうタイプなのかを知っておくことも重要なポイントになりそうです。そのあたりはいかがですか?

【戸田久実】アンガーマネジメントのスタートは「自己認識」です。そこで取り組んでほしいのが「アンガーログ」という怒りの記録です。怒りを感じたとき、どのようなことがあってどのような怒りを感じたのかを記録するものです。

このとき、怒りのレベルを数値化するのもおすすめです。怒りに10段階で点数をつけるのです。0点がまったく怒りを感じていない状態として、10点は全身が震えるくらいの人生最大の怒りです。

そうして怒りを感じた場面や出来事と怒りのレベルを記録していくと、「自分はこういうときにこの程度の怒りを感じることがある」といったパターンが見えてきます。すると、同じようなことが起きたとき、「前に○点の怒りを感じたことだ」と客観的に自分の怒りを把握できるようになりますから、怒りにのみ込まれてしまうことがなくなっていくのです。

「6秒待つ」と組み合わせると効果的

【澤円】よく見聞きする手法だと、「6秒待つ」というものもありますよね。

【戸田久実】ただこれは、怒りが生じても6秒も経てば理性が働くということであり、6秒経てば怒りが消えるわけではありません。「理性が働くまでの6秒間をやり過ごせるようになりましょう」ということです。そうするためにも、先に紹介した、怒りに10段階で点数をつける手法が有効です。6秒のあいだに、「この怒りは何点くらいだろう?」と考えることに意識が向き、怒りに任せた行動に走ることを回避することができます。