理想は質を保ちつつ「ちょい速め」
その一方で、仕事が速いけれど雑なタイプは、1週間後でも間に合うものを、ろくに見直しもせずすぐに出してしまう。それは、「早く出すのが優れている」と勘違いしているからだ。こういうタイプは、質を高めるために粘るのが面倒で仕方がない。だから早く提出することでごまかそうとする。こういうタイプには、「いくらすぐに出てくる牛丼屋でも、ものすごくまずかったら客は入らないだろう。一定のクオリティを担保するためには、期日までたっぷり時間を使って、じっくりやれ」と言うしかない。
しかし多くの人にとっては、自分のリズムが規準になっている。本音を言えば、私自身も例外ではない。それを強制的に「ダメだ」と言われるとカチンとくるに決まっている。そこで先ほどのマトリックスを示しながら、「この部署で望ましいのはこのゾーンで、ほかの人はみんなここに入っている。あなたももう少しこちらのゾーンに近づくよう努力してほしい」というように、穏便に話し合ってはどうだろう。しかしそれでも改まらない場合は、この仕事には不向きと判断して、異動してもらったほうがお互いのためかもしれない。
スピードと質の関係は、どちらか一方を取ったらもう一方を捨てなければいけないというものではない。一番理想的なのは、一定のクオリティは保ちながらも、スピードは「ちょっと速め」を心がけることだ。その結果、平均より正確だとか、平均より優れているという人は能力が高いし、どこの職場でも重用されるだろう。
職種や環境によって、求められる仕事の速さや質は異なる。管理職は常に最適な速さと質のさじ加減を見極め、そのうえで部下に仕事を振り、それを評価する必要があるだろう。
(構成=長山清子 写真=PIXTA)