政治改革の焦点は、裏金問題だけではない
結局のところ、日本型ライドシェアは、「タクシー会社の、タクシー会社による、タクシー会社のため」の方式だ。なぜ、そうなっているかといえば、政治家が業界に忖度しているからである。タクシー業界から政治家・政党などへ流れる膨大な政治献金の影響なしには考えがたい。日本の政治はタクシー業界にNOと言えない立場というわけだ。
読売新聞が衆参の国会議員が代表を務める資金管理団体と政党支部の政治資金収支報告書を集めたデータベース「政治資金システム」で、寄付者名に「タクシー」と入力して検索してみると、60件が表示された(2021年分)。寄付者はタクシー会社や業界団体のほか、地方で業界団体が作る自民党の職域支部だった。
そして寄付先は、ほとんどすべてが自民党国会議員の政党支部。総額は900万円あまりに上った、と報じている。さらに同紙は、「タクシー業界と政治の結びつきは、政治献金だけにとどまらない」として、昨年10月、永田町の自民党本部で開かれた自民党タクシー・ハイヤー議員連盟の総会で、会長の渡辺博道衆院議員が「タクシー業界をしっかりささえていく、我々の使命だ」と語り、幹事長の盛山正仁文部科学相が「安易なライドシェアは認めるわけにはいかない」と述べたことも記事にしている(読売新聞オンライン、2023年11月10日配信『深刻化するタクシー不足、「ライドシェア」導入に反対する事業者と政治家の関係』より)。
岸田文雄政権において今、政治資金規正法の改正が喫緊の課題だが、政治家の実質的な脱税行為だけでなく、タクシー協会などの政治団体が既得権を守るために、与党に多額の献金やパーティー券を購入している実態をさらに明らかにすることも重要である。あらゆる政治団体への寄付には、その金額を問わず現金を禁止し、記録の残る電子的な手段のみとすることが必要である。
なお、本稿は、制度・規制改革学会の提言にもとづいたもので、そちらも参照されたい。