なぜ対抗して円満調停を出したがるのか
私自身も、「離婚調停を申し立てられたので、こちらからは円満調停をしたい」という相談を受けることがあります。理由を聞くと、「自分は悪くない。勝手に離婚を言い出した相手を裁判官から厳しく諭してほしい」と言われることが多いです。
上に挙げたような円満調停の実際のところをお話しして、離婚調停の中で話し合えることを説明し、「円満にしたいのなら夫婦関係を見直して相手の嫌がる点を直せますか」と聞くと、「なら離婚でいいです」と帰っていくことがほとんどです。
どの方もこういったことをおっしゃるので、円満調停を「偉い人(裁判官)が配偶者のダメさを指導してくれる手続き」と思っている方が多いのだと思います。
こういったアドバイスを受けずに、離婚調停に対抗する意図で円満調停を行うと、A子さんの夫のように、円満とは名ばかりの、ひたすら相手を批判するだけの話し合いになってしまいます。
円満調停を出してきたということは、反省する気持ちがあるのかと期待していると、落差でひどく傷ついてしまうことになります。
批判ばかりでは相手の心は戻らない
円満調停を申し立てたからといって、そのことだけで夫婦関係が修復の方向に向かうわけではありません。重要なのは話し合いの中身です。
特にモラハラで離婚を求められた人の場合、「自分は不倫も暴力もしていないから離婚する理由などない」と反発するあまり、同居中の言動を反省する機会を持たずに、離婚したがっている配偶者をひたすら責めてしまいがちです。
中には、長い陳述書で配偶者やその家族の欠点を羅列して、強い口調で批判しながら、「このように相手が悪いのだから修復を求める」と主張する人もいます。
離婚には応じない、修復したいと言いながら批判ばかりしていては、相手の心が戻るはずがありません。客観的に見ればわかることですが、当事者になるとなかなかそうは思えないようです。