「寝酒」は睡眠の質を下げる

では、寝る直前まで食べたり飲んだりしていることにより、体にどんな影響があるのでしょうか。

まず、胃では食べたものと消化に必要な胃酸が残っているため、夜中に胃酸が逆流して逆流性食道炎の原因になります。また、食事の際に水分を摂ることで夜中にトイレに行きたくなり、何度も目が覚めるという夜間頻尿で困っている人も多いです。

寝酒の問題はさらに深刻です。アルコールは脳の働きを低下させます。睡眠薬と似たような作用があるので一時的には眠くなりますが、実は睡眠は浅くなり、質が悪くなるため、「脳のゴミ出し」もうまく働きにくくなります。以前は「少量のお酒を飲んでいる人のほうがむしろ認知症になりにくい」といわれていましたが、最新の研究では「少しのお酒でも認知症のリスクになる」といわれるようになってきました。

ベッドルームでワインを飲む女性
写真=iStock.com/PonyWang
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しかし、自分で実感できる症状はまだいいのかもしれません。問題はむしろ、自分では気づきにくい「睡眠中の血糖値スパイク(血糖値の急上昇・急降下)」という現象です。

血糖値の乱高下が与える悪影響

食べたものをエネルギーにするために不可欠なのがインスリンです。膵臓から分泌されるホルモンで、エネルギーの元になる糖(ブドウ糖)を細胞の中に送り込むという働きをしています。食事をして血糖値が上がるとインスリンが分泌され、食事の中の糖は細胞に取り込まれて血糖値が下がります。健康な人の場合、食事をしてからおよそ30〜60分で血糖値が最も高くなり、4~5時間すると最も低くなります。

ところが、寝る前に糖質を摂ってしまうと、寝ている間に血糖値が急激に上がり、その結果インスリンが過剰に分泌され、その後急激に血糖値が下がるという現象が起こることがあります。

この血糖値の急激な変動により自律神経が乱れ、特に低血糖になったときには脳を覚醒させるアドレナリンなどのホルモンが分泌されるため、眠りが浅くなります。逆に高血糖になったときには、エネルギーにならず余った糖が中性脂肪となり体に蓄えられるので、肥満や脂肪肝などの原因になります。

さらに怖いことには、高血糖の状態が続くと、徐々にインスリンの働きが悪くなり、糖をエネルギーに変えることが難しくなります。これが糖尿病の原因であり、インスリンが効きにくくなることを「インスリン抵抗性」と呼びます。

インスリン抵抗性は脳でも発生することがあります。こうなると、いくら食べても脳は糖をエネルギーに変えることができなくなるので、慢性的なエネルギー不足の状態に陥ります。これが認知症の症状に悪影響を与えている可能性があります。