トップセールスだけが知っている、必ず売れる「価値の訴求」法

キーエンスのセールスパーソンは、この利点をさらにブラッシュアップし、「価値」に変えて商談を行います。どういうことかというと、利点に対して「時間視点」と「人視点」の要素を掛け合わせて、相手にとって商品が「価値のあるもの」だと感じるように伝えるのです。

前述の自動プレゼン資料出力機能の例でいえば、「従業員様の時間が60分削減できます」という言い方をしていました。これは「利点」です。これに「人視点」から、「御社の場合、営業の方々が100名いらっしゃいますので――」という要素を加える。さらに、時間視点を加え、「年間でいうと2000時間の削減になります。1年間の1名当たり労働時間は約2080時間なので、2000時間の削減というと、従業員様1名分の年間労働時間にあたります」とセールストークを展開します。これが、「価値」を伝えるということです。「人件費に換算すると、従業員様1人分の1年間の人件費、おおよそ500万から600万のコスト削減につながります。いかがでしょうか?」そうするとお客様は、「500万、600万の価値がこの自動プレゼン資料出力機能にあるのか。いいじゃないか、この機能」となるわけです。

「利点」を「価値」に広げるためには、下準備、下調べがとても大事です。今の例で言えば、お客様の会社の従業員数とお客様の社内の業務を調べておけば、このプレゼンができるわけです。話すときには、「御社の組織体の中で営業の方々が100名いらっしゃるということを、IRで拝見しました。そうすると、想定ではありますが、従業員様の時間が合計2000時間削減できます。この一機能で500万円ぐらいのコスト削減になるかと思うのですが」といった形で進めます。

また、同じ利点であっても、相手によって価値は変わってきます。たとえば、相手が人事・総務部の担当者であれば、「業務効率化で残業が年間2000時間減り、残業代が750万円削減できる」ということが価値になりますが、営業企画部がお客様の場合は「業務効率化で事務作業が年間2000時間減ります。2000時間というと、約1年分ですから、その分営業活動に充てることができるとして、御社の営業担当の月間売上が平均300万円とすると、年間にして売上3600万円上げることが期待できますね」という伝え方が効果的になります。