値下げ要求されないセールストークの鉄則
「商品の特長を伝えるだけでも、十分これまで売ることができていた」という人もいるでしょう。もちろん、お客様の中には特長を伝えるだけで商品を買ってくれる人もいます。ただ、そういうお客様は、自分の頭の中で「この商品の価値は何か」を自分で考えることができる“賢いお客様”です。ですから、「同じ機能がある商品って、ほかにもあるのではないか」と思って調べ、「やっぱりあった」と見つけてしまう。そうなると、必ず相見積もりを取ります。そして値下げを要求したり、最終購入してもらえなかったりする可能性が高くなります。賢いお客様は、有難いお客様ではあるのですが、“いいお客様”にはならないのです。自分で自分の利点に気づいていないお客様に、それまで気づいていなかった「価値」を訴求することが、トップセールスになるためには重要なのです。きちんと理屈立てて、商品の「価値」を説明していけば「たしかに、これは役立ちますね」とスムーズに商品を購入してもらえるわけです。
「キーエンスは体育会」というイメージから勘違いしている人も多いのですが、気合を入れて情熱的に行う商談がトップセールスパーソンのやり方というわけではありません。お客様にとっての商品の「価値」を理論的に分析してセールストークを構成し、わかりやすいよう順番立てて話していけば、必ず「ほしい」となります。だから、口のうまさや人格は営業成績に対してそれほど重要な要素ではない、ということなのです。
(構成=久保田正志 図版作成=大橋昭一)