ジョージア外務省に入るが、歓迎会を開いてもらえず不安に

私が大好きな日本の習慣が歓送迎会です。会社であれば異動や離任、学校でも誰かが転校するタイミングには絶対にやりますよね。日本人は一期一会を大事にしますが、その感覚がよく表れています。

日本の方は誰でも小さいときから歓送迎会に親しんでいるから当たり前のものだと思っているかもしれませんが、実は歓送迎会文化は、外国には必ずしも存在しません。

私がジョージア外務省に着任してからキッコーマンとの違いを感じたのが、歓迎会がなかったことによる一抹の寂しさです。自分が着任したときも、あるいは誰かが異動や離任したときにも、ジョージアでは歓送迎会をしません。ジョージア人の人間関係が希薄なわけではありません。むしろ人と人との付き合いを重んじる社会です。にもかかわらず歓送迎会文化がないのです。私は着任した際に歓迎会がなかったことで、正直に言うと「これからうまくやっていけるかな」と心細く感じました。

 ジョージア州の首都トビリシ、2019年
写真=iStock.com/Lukas Bischoff
ジョージア州の首都トビリシ、2019年(※写真はイメージです)

日本の歓送迎会は「一期一会」の精神の表れ

日本は歓送迎会を通じて、入ってきた人に対しては「あなたはこれから集団の一員だよ。いっしょにやっていこうね」とあたたかく迎え入れ、送り出す人に対しても「今まで本当にありがとう。集団を離れても大事に思っているよ」という気持ちを表し、その後の関係性を円滑にし、お互いに気持ちよく過ごせるようにするための時間を作るのが上手だと思います。

特に別れのときに色紙にみんなからの気持ち、メッセージを書いて手渡すのがすばらしい。ほかにも手紙を読み上げたり、手作りのプレゼントを渡したり、その人が好きな食べものをいっしょに食べたりしますよね。日本人は奥ゆかしい人が多く、普段の生活の中ではお互いの気持ちを汲み取り合ってはいても、意外と実際に言葉にすることが少ないでしょう。けれども、送別会のときには去りゆく人のことをいかに大切に想っていたのかを表現し、感謝の言葉を伝えます。

私自身、日本で何度かお別れの会をしていただいたことがありますが、そこでみなさんからいただいた言葉が、自分の人生の門出において大きな力になりました。このように、お別れの機会をしっかりと重んじる文化はものすごく良いものです。