間違いだらけの「牛乳信仰」

そもそも、毎日同じものを食べることにはアレルギーのリスクが伴います。頻繁に食べるものは抗原になりやすいのです。たんぱく質を摂取することは老化防止のためにも非常に重要ですが、毎朝牛乳を飲む、毎朝ヨーグルトを食べるといった習慣はおすすめしません。乳製品には依存性がありますから、冷蔵庫に常備するのを思いきってやめましょう。そのかわりに、豆腐、納豆、魚などの多種多様なたんぱく質を日替わりでとるのが理想です。

「牛乳を飲まないと骨が折れやすくなる」と信じている人もいるでしょう。今でも毎日給食で子どもたちに牛乳を飲ませている地域が圧倒的多数です。こうした「牛乳信仰」は根強いものですが、私に言わせれば毎日牛乳を飲むことは腸にとって危険な行為です。

健康な体を保ちたいなら、牛乳からカルシウムをとることよりも、魚からビタミンDをとることを意識してください。日本人の98%がビタミンD不足であることが東京慈恵会医科大学の調査によって明らかになり、大きな話題になりました。ビタミンDはカルシウム代謝に関係し、骨を丈夫にする作用があることで知られています。さらに、免疫力をアップさせ、アレルギー症状を改善することもわかっています。小腸の粘膜を正常に保ち、免疫の過剰反応を抑える作用があるのです。

アメリカでビタミンDと新型コロナウイルス感染症の関係を調べたところ、ビタミンDの血中濃度が高い人ほど、PCR検査での陽性率が低いことがわかりました。ビタミンDの血中濃度と陽性率との相関が最大になる濃度は55ng/mL程度でした。日本内分泌学会や日本骨代謝学会が推奨する目安は30ng/mLですが、免疫の観点からは、もっと高い濃度にしなければいけないのです。ただし、日本人の98%はこの30ng/mLにも届いていないのが実情です。

【図表】魚からビタミンDをとれば骨も免疫も強くなる

ビタミンDは、コレステロールを原料として、太陽の紫外線を浴びることによって皮膚でつくられます。最近は「紫外線が体に悪い」という情報が浸透し、紫外線を避ける人が増え、ビタミンDがつくれなくなっています。ビタミンDを生成するのは紫外線の中のUVBで、洋服や窓ガラスを通過できません。日焼けするまで浴びなくても、1日15分以上、直射日光を浴びれば確実につくられます。また、ビタミンDは魚の内臓に多く含まれます。イワシを丸ごと食べたり煮干しを食べるのもおすすめです。

ビタミンDに関しては、サプリメントで補うのもいいでしょう。過剰摂取すると障害が起きますが、市販サプリメントに含まれている程度の量で過剰摂取になることは考えられません。

筋肉とビタミンDとの関係も研究が進んでいます。オーストラリアの実験では、65歳以上の女性を2つのグループに分けて検証しました。一方のグループにはビタミンDを摂取してもらい、もう一方にはプラセボ(偽薬)を飲ませました。どちらのグループにも運動せずに生活してもらって4カ月後に筋肉量を測定したところ、ビタミンDを飲んだグループのほうが明らかに筋肉は増えたのです。介護予防の観点からも、ビタミンDは重要です。