本業時代の経験や人脈が定年後に生きる
ある程度の年齢になると、「本業で何をやってきたか」ということは、どうしたって見られます。やはり、ここでも自分を知ることが大事。今までのキャリアや今の自分の立場、将来の見通しなど、じっくり考えてみましょう。
そして、それをうまくプロフィールで見せる必要がありますし、それがないなら、現役のうちから自分がいずれ就きたい仕事につなげられる仕事に積極的に取り組んだほうがいい。これは独立しても仕事になりそう、経験になるな、という視点で本業に取り組みましょう。
また本業時代に人脈をつくっておけば、定年後に人づてで声がかかることも多いです。顧問のような仕事は、ほとんどが紹介です。
私の知人に不動産会社の営業をしている人がいますが、彼のお客さんには地主や経営者などお金持ちが多い。彼の主な仕事は、不動産の仲介ですが、それだけでなく節税や相続、子どもの教育まで、いろいろな相談を受けています。
なぜ彼が、そんなよろず相談にのるかというと、彼には将来、富裕層向けコンサルタントとして活躍したいという夢があるからです。そのため、今のうちからそういったお客さんとよい関係性を築き、ファイナンシャル・プランナーの資格をとり、お金の知識も身につけている。まだ定年を迎えていませんが、彼のような人は、定年後も成功するだろうなと思います。
定年後の起業は現役時代よりリスクが高い
定年後に起業するのはどうか。正直にいうと、現役時代よりリスクが高いといえます。もちろん60歳で起業して大成功という人もいますし、起業家に憧れていた人はトライしてみてもいいと思いますが……。
ただお金の不安があるなら、お金をあまり使わないほうがいい。退職金をつぎ込んで大きなことを始めることには、慎重になったほうよいでしょう。また人を雇うと責任が発生しますし、簡単にやめさせられません。やるなら一人起業です。一人で会社を立ち上げて、一人社長、一人従業員で。間違っても一発逆転を狙ってはいけません。定年後になると気力、体力も衰えていますし、時間も限られていますから、なかなか若い頃のように再起しにくい。あまりリスクをとらないほうがよいと思います。
特に慎重に始めるべきなのが「フランチャイズ」と「不動産」です。フランチャイズは、もともとの仕組みがあるので失敗しませんが、本部の言うとおりにやるだけですから、あまりサラリーマンの仕事と変わりません。それなのに元手が必要でリスク部分は請け負うことになります。
もちろん成功するケースもありますが、フランチャイズの会社自体つぶれる可能性もあり、そうすると投じたお金がすべて消えてしまう。フランチャイザーの見極めが重要になります。
もう一つ慎重になるべきなのが、アパートやマンション経営など不動産事業です。現役時代にサラリーマンとして個人の信用で借金させて、アパートやマンションなど不動産事業をすすめるビジネスにのって、いざ始めたものの、うまく回らなくて失敗する人は少なくありません。空室リスクや家賃滞納など、不動産事業にリスクはつきもの。定年後も借金を背負ってビジネスが全く成り立たなければ、泣くに泣けませんから。