人と話すのが好きで
取材後にメールのやりとりをしている中で、1人の高校生に本を薦めた。渡邉美樹(ワタミグループ創業者)を描いた高杉良の小説『青年社長』。「今、2つやりたいなと思っていることがあって、喫茶店のオーナー、もしくは居酒屋のオーナー」と話していたからだ。
久保田博典(くぼた・ひろのり)さんは、岩手県立宮古商業高校(流通経済科)2年生。剣道二段。
「もともと、人と話すのがけっこう好きで。で、コーヒーがすごい好きで、興味があって、去年、喫茶店にちょっと入ってみたんです。そこのオーナーの方がすごい気さくで。なんか『あぁ、こうやってお客さんと友だちのような仲でやっていけるような仕事があるんだ』というので、ちょっと感銘を受けまして」
居酒屋のほうは。
「部活と、町のクラブで剣道をやってるんですけれども、町のクラブで剣道やってる方って、けっこうお酒を飲む方が多いんですね。宮古の人なんか、もう特に。そういう先生方に喫茶店のことを言ってみたら『それだったら、居酒屋やってみたらどうだ? ちゃんと生活としてもやっていけるだろうし、いいんじゃないか』みたいなことを提案されて、先生方への恩返しという意味でも、やってみるっていうのはいいかなと思いました」
場所は宮古で?
「居酒屋であれば宮古かなと。喫茶店だったら、岩手の中でやりたいっていうのがあるんで、北上とか花巻とか、人通りの多いところじゃないと厳しいのかなと。人通りが多ければ、いろんな人と話もできますし」
宮古市の人口は約5万8000人。北上市は約9万4000人、花巻市は約10万1000人。しかし人の多さでいえば盛岡市の約29万5000人がいちばん多い。しかも盛岡は、ふかくさ、ママ、クラムボン、六分儀……名店と呼ばれる喫茶店の多い街だ。
「ただ、盛岡だと、なんかあまりにもテンプレすぎるというか。ふつうに考えることをやるっていうのはあんまりあれだから、ちょっと外れたところでやってみたいというのがあるんで。ひねくれてるんです(笑)。昼は喫茶店、夜は居酒屋? それもちょっと考えたんですけれども、あまりにもハードすぎないかなと思いまして」
テンプレとはテンプレート——定型のことだ。さて、久保田さん、喫茶店、居酒屋を始めるにはどんな準備が必要だと考えていますか。この問いに、彼さんは具体的な金額で答えた。