終身刑の創設に難色示す法務省

少なからぬ問題を抱える裁判員制度だが、すでに裁判所の下す判決に大きな影響を与えている。裁判員制度を成功させるためには国民の参加や協力が不可欠。その国民の多くは、続発する凶悪事件に対して厳罰を望むようになっている。そうした国民の協力を一人でも多く得るために、国民感情を反映させた厳しい判決が多くなっているのだ。

その最たる例が、09年3月に名古屋地裁で下された闇サイト殺人事件に対する判決である。この事件は07年8月に闇サイトで知り合った男3人が名古屋市内で会社員の女性を拉致・殺害したもの。裁判長は「極刑をもって臨むしかない」として、強盗殺人罪などに問われた被告3人のうち2人に対して求刑どおりの死刑を、自首してきた残る1人に対しては無期懲役を言い渡した。

この裁判での焦点は、被害者が1人の強盗殺人に死刑を選択するかどうかであった。これまで死刑適用の判断基準とされてきたのは、1983年7月に最高裁が永山則夫元死刑囚(97年執行)に対して示した判決、いわゆる「永山基準」である。犯行の性質や動機、殺害方法の残虐性、被害者の数などを総合的に考慮し、罪責が重大で極刑がやむをえない場合に死刑の選択が許されるとした。過去の判例では被害者が1人か2人以上かが、死刑適用の分かれ目となってきた。

もし、死刑を免れて無期懲役となれば、だいたい20年で仮釈放される。自分の大切な身内を殺害した犯人が、20年後とはいえ大手を振って社会に出てくることを想像したら、遺族の怒りは当然収まらない。そうした被害者に対する同情が国民の間に高まっていることは、99年に山口県光市で母子を殺害した元少年に対する広島高裁差し戻し控訴審(08年4月)での、死刑判決をめぐる一連のマスコミ報道を見てもわかる。

一生刑務所から出られなくする「終身刑」の創設を望む声は昔からある。この終身刑なら、被害者側の感情が和らぐ可能性は高い。しかし、犯罪の多発を受けて、すでに受刑者の数が刑務所のキャパシティを超えている。さらに、財政難で新しく刑務所をつくることも難しい。法務省としては、終身刑の議論が盛り上がってほしくないのが本音なのだ。