「下がって元に戻る」だけでも利益が出る

図表6は、20年間のうち前半の10年間は株価が年率5%ずつ下がり、その結果10年後には株価は元の6割まで下落した後、後半の10年間で回復軌道に乗って最終的に20年後には元の株価に戻る、というパターンです。

この場合、20年後の資産残高は3136万円で投資元本に対する増加率は+30.7%です。

【図表】株価が当初10年で4割減し、その後の10年で元に戻るケース
筆者作成

株価は実際20年間ずっと低迷しているように見えますが、資産額は意外と大きく増えています。

これこそが、積立法(ドルコスト平均法)の強みを顕著に表しています。

もし、最初の日に一点集中で買っていた場合は、当然、元本は元に戻るだけでプラスマイナスゼロとなりますが、積立法で投資すると、当初下がるリスクがあっても、最終的に元に戻るようなケースはしっかりリターンが得られるのです。

「投資したことを忘れる」くらいでいい

下落局面に遭遇しても、投資対象が長い目で見て元のレベルにしっかり戻って来られると確信できるなら、慌てて売却してしまうのは判断を誤っている、ということが分かると思います。

積立投資であれば、下落局面を味方につけることができるということです。

ただし、このケースのポイントは目の前でひたすら下げ続ける相場を前に、いずれ回復軌道に再び乗ると「確信」できるか、にかかっています。

ある意味、投資したこと自体を忘れてしまうぐらいのメンタリティがあれば、この投資法での果実は得やすいでしょう。

実際このような値動きをした事例として、まさに1989年の日本のバブル崩壊からの34年間の動きがこれにあたります。

日経平均株価は1989年12月に、バブル最高値3万9098円68銭をつけた後、2009年3月10日に最安値7054円98銭まで下落、そして2024年2月22日に3万9098円68銭と再び最高値を更新するまでの軌跡が、このパターンそのものでした。

ちなみにこの間、日経平均に対して積立投資を月10万円ずつ行っていた場合、約34年間の積立資産の時価は1億400万円、投資元本4000万円に対し+154%という非常に大きなリターンを得られたことになります。