近未来的なカプセル型のデザイン、シンプルな内装

これまで報じられてきたAppleカーのデザイン、機能を見てみよう。エクステリア(外観)はiPhoneを想起させる、近未来的なデザインが開発されていたようだ。

プロジェクトの途中で何度か変遷しているが、ブルームバーグは2020年ごろに予定されていたデザインとして、米カヌー社のEV SUV「ライフスタイル・ヴィークル」に近いと報じている。ちなみにライフスタイル・ヴィークルは、NASAもアルテミス計画で採用している。地上で宇宙飛行士を乗せ、発射台へ運ぶ予定だ。

Appleカーに近いデザインとされるカヌー社のSUV
Appleカーに近いデザインとされるカヌー社のSUV

エクステリアは、横から見るとフロントウインドウは90度に近い弧を描き、ルーフと車両前端をなだらかに結ぶ。後方もほぼおなじ円弧型のデザインで、全体のシルエットは前後の区別がないカプセルのような形状だ。軽くスモークのかかった窓とピラーが一体化し、総じて非常にシンプルな印象を帯びる。余分な装飾を嫌うAppleからこのまま発売されたとしても、違和感はないだろう。

インテリアはどうか。Appleカーはミニマルなインターフェースを追求しつつ、シートにはプライベートジェット並のラグジュアリーな質感があったという。内部を見たという人物はブルームバーグに対し、インテリア全般に「でこぼこのある泡」に包まれているような感覚だったと述べている。

4人乗りのシートは自在にリクライニングでき、複数あるデザインの多くでは、車内中央に大型スクリーンが設けられていた。このスクリーンはAppleのエコシステムの一角を担い、iPhoneから音楽や映画鑑賞をストリーミング再生したり、ビデオ通話アプリのFaceTimeを車内で利用したりできる構想だったという。

今年1月には「2028年のデビュー」と報じられた

Appleの名は現在も、ドライバー付き自動運転の走行許可を受けた企業として、カリフォルニア州陸運局のサイトに掲載されている。

今年1月には、目指す自動運転のレベルを引き下げたうえで2028年のデビューを目指すと報じられたが、実現せずに終わったと報じられた。

そもそもAppleは、なぜ自動車づくりを試み、頓挫したと報じられているのか。iPhoneの次の一手になることを目論んだものの、プロジェクトに必要不可欠な自動車産業のパートナー探しで行き詰まったようだ。

2014年ごろ、共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏の死去から3年経ったAppleは、経営の多角化を考えていた。iPhone 6は飛ぶように売れ絶好調だが、Mac、iPhone、iPadやオンラインサービス以外にも、成長分野の収益源が欲しい。当時シリコンバレーでは、EVと自動運転が次世代の成長分野とみられていた。

ジョブズ氏の後継となるティム・クックCEOらは、ここに目を付けた。MacとiPhoneで培ったノウハウを、自動車づくりに生かせないか。車載システムが複雑化していくなかで、Appleの本業であるコンピュータが持つ役割はますます大きくなっている。