なぜ「社宅を無償で提供する」はNGなのか

ただし、注意点もあります。

そもそも税法は「公平性」が大原則です。

つまり、特定の人だけがメリットを享受する場合には、その方に対する給与を支払ったものとする、という考えです。

これを「現物給与」と言います。お金以外での支給がこれにあたります。

主に次の3つが該当しますので、頭の中に入れておいてください。

1.社宅を無償で提供する
2.社宅家賃を税法規定より低額で給料から天引きする
3.特定の社員や役員だけに社宅を提供する

もし税務調査で指摘された場合には、源泉所得税が徴収されることになります。

また、現物給与は社会保険料の対象になりますので、ダブルパンチになります。

この所得税は本来、従業員が支払うものですから、会社としては徴収しないといけません。ただ、従業員に対して今さら「会社の経理が間違った処理をしたので、過去にさかのぼって給料から天引きさせてください」とは言えないでしょう。結局は会社負担になり、キャッシュアウトすることになります。

これは知っていれば防げることなので、ぜひ知識として覚えておきましょう。

「税金を払うくらいなら経費で使ったほうがいい」はウソ

経営をしていると、よく「社長、節税しませんか?」といった謳い文句で、あれやこれやと営業されることがあります。たとえば保険などは定番ですが、中には「飛行機をリースしませんか」なんていう話を持ってくる方もいらっしゃいます。

ただ、これらの営業のほとんどが実は節税ではなく、課税の繰り延べを提案しているということをご存じでしょうか。それらのスキームを利用すると一時的には税金が安くなるものの、トータルで見たときには同じ額の税金を払う可能性があるのです。

ちなみに先述した飛行機のリースも、一時的には減価償却などの費用が計上できますが、結局リースなので売却した際に雑収入が計上され、最終的には税金がかかってきます。

これを回避するためにはもう一度リース契約をする、それの繰り返しになるので、安易に契約しないほうがいいでしょう。

松岡靖浩『会社をつぶさない社長の選択』(かんき出版)
松岡靖浩『会社をつぶさない社長の選択』(かんき出版)

私が経営者に伝えていることは、利益がすべて税金として持っていかれるわけではないということ。法人だと3割~せいぜい4割くらいです。つまり税金を支払っても7割ほどはお金が残ります。

そこで私は、無理して課税の繰り延べ商品を買ってキャッシュアウトするのであれば、税金を支払ったほうがお金は残りますよ、と伝えています。

また、中には「松岡さん、税金を払うくらいなら飲みに行って経費として使ったほうがいいよね」と言う経営者もいます。しかしこれは節税というよりも、無駄使いして利益を圧縮しているだけです。

経費を使って飲むのを全部ダメと言う気はありませんが、あくまでも浪費ですので、ほどほどにしましょう。

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