令和6年の公示地価が公表された。不動産事業プロデューサーの牧野知弘さんは「大都市圏で地価が上昇する中、千葉県と埼玉県に差が出てきていることが明らかになった。子育て政策に力を入れている千葉県流山市や市川市が、住宅地価格の上昇を牽引している」という――。
千葉県千葉市の位置と埼玉県さいたま市の位置
左右写真=iStock.com/Elico-Gaia
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「首都圏3位」を争う埼玉と千葉

埼玉県と千葉県といえば、首都圏1都3県にあって東京都と神奈川県を後目に常に第3位争いをすることで有名だ。

魔夜峰央原作の漫画『翔んで埼玉』は2019年に映画化され大ヒットとなったが、この話の中でも「埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ」という驚天動地の台詞が吐かれたり、両県が地元出身の有名人の名を競い合ったり、互いに相手のダサさを笑いあったりするなどの滑稽なさまが、東京都民や神奈川県民への嫉妬とあわせコミカルに表現されていて話題となった。

もちろんこれは映画の中の話であって、現実に互いが口で言い争うさまはほとんどがジョークの世界。この争いを横目で眺めて毒を吐く(これもわざと煽り立てるジョークのたぐい)のが神奈川県民である構図も、東京都民からみればなおさら滑稽なことであろう。

だが今、再びこの両県の間で対立を助長する事態が勃発していることをご存じだろうか。

大都市圏で地価が軒並み上昇

昨今、国土交通省から令和6年公示地価の発表が行われた。これは例年1月1日現在の地価の状況を発表するもので、全国の地価動向を示すものとして注目されている。

今年の発表によれば、地価は全国平均で住宅地は対前年比で2.0%、商業地で同3.1%と3年連続で上昇となった。コロナ禍の影響で一時的に下落した時期を除き、地価は金融の大規模緩和が実施された2013年以降上昇基調にあり、今回もそれを裏付ける結果となった。

地価の上昇は大都市圏でみるとさらに鮮明となる。東京都区部は住宅地で5.4%、商業地で7.0%といずれも前年における増加率3.4%と3.6%を大きく上回った。

特に大阪は商業地の伸びが著しく9.4%の上昇。住宅地も3.7%の伸びとなった。何かとお騒がせな関西万国博覧会ではあるが、25年の開催に向けてホテル建設や市街地中心部におけるタワマン建設が進み、地価は明確な上昇を見せている。

地価が上がっているのは三大都市ばかりではない。地方四市と呼ばれる札幌、仙台、広島、福岡でも地価の上昇は顕著だ。地方四市の平均では住宅地で7.0%、商業地で9.2%といずれも高い上昇率を示している。