親が誰かをほめるだけで自信をなくしてしまう子もいる

中には、母親にため息をつかれたり、あきれられたりするたびに、深く落ち込み、「見捨てられている気がする」と言う子もいます。

また、親がほかの子(やきょうだい)をほめただけで、「自分はダメなんだ」「自分はあの子(きょうだいや友だち)より劣っているのかな」と自信をなくしてしまう子もいます。

彼らの言葉を聞いていると、子どもというのは親の否定的なふるまいをこれほどまで敏感に感じとっているのかと気づかされます。

親に否定されることほど、子どもにとって悲しいことはないのです。

無意識のうちに親の思い通りにしようとしていないか

子どもの能力や学力を重視しがちな親御さんは、そればかり気にして子どもを追い込んでしまうことがあります。

子どもの成績や点数を見て、大げさにあきれてみせたり、子ども同士を比較したりして、意図的、あるいは無意識のうちに子どもをコントロールしている親もいます。

母親と一緒に勉強している少年
写真=iStock.com/takasuu
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でも、そもそも親が子どもを自分の思いどおりに動かそうと思っても、そのとおりになるとはかぎりません。

もしかしたら、子育てというのは親がいくら努力しても思いどおりにならない、最たるものかもしれません。だからこそ、親も子どもも苦しくなってしまうのでしょう。

私にも、無意識のうちに子どもたちを自分の思いどおりにしようとしていた時期がありました。

長女は幼稚園の年長のころ、公文に通っていました。

計算が大好きだった長女は、算数の進度が早く、表彰を受けるほどでした。

教室の先生からも「年度末までにここまで進んだら、何か賞をもらえるよ」と言われ、私も必死になってプリントをやらせていました。

が、あるとき、長女はせき払いのようなチックをしはじめたことに気づきました(ここでチックについて誤解のないよう、もう少し詳しくお話ししますと、親の育て方が悪いから発症するというわけではなく、脳の異常で幼少期によく起こる疾患のひとつです。たいていの場合は自然治癒しますが、過度なストレスを与えると悪化したり長引いたりするケースもあります)。

私は、とても反省しました。賞だとかトロフィーほしさにがんばらせすぎたなと。

そして、子どもがそもそも自分の思いどおりになると思うこと自体がまちがいだと気づいたら、子育てがずいぶんと楽になりました。

ですから、子どもが思うように動いてくれなくて苦しんでいる親御さんの話をうかがうたびに、相手が子どもであってもコントロールしないほうが、お互いに楽になることをお伝えしています。