「こうすればいいのに」は子どもにも禁物

そもそも、人間関係というのは、自分の思いどおりにコントロールしようとすればするほどうまくいかなくなります。

私も、診察室で患者さんの話を聞きながら「こうすればいいのに」と思ったとしても、それを相手に押しつけることはありません。

どこがつらいのか、なにが不安なのかをじっくり聞いたうえで、「たとえば、こうやって考えてみることもできるかもしれませんね。どう思いますか?」「それをしてみたら、どんな不安が出てきそうですか?」などと、少しずつ、少しずつ歩み寄っていくイメージで対話を重ねていきます。

患者さんは、大きな不安を抱えていて自分は前に進めないと思っていますから、そこを無理やり前に進ませようとすると、たとえそれが正論だったとしても患者さんの回復につながらないこともあるのです。

「その考えはまちがっている」とか「こちらのほうが正しい」とジャッジすることにも注意が必要です。

相手には、相手なりの考えや価値観があります。その価値観でこれまでやってきたし、これまで生きてきたのです。

それを他人が「正しい」「正しくない」とジャッジすることはできません。

親が子どもの考えや価値観をジャッジして、否定し、自分の思うように舵取りしようとすると、子どもは不安定になったり、自信をなくしたり、心を閉ざしてしまう可能性があります。

親御さんは意識的でなくても、直接的に否定をしたつもりでなくても、比較や失望などの言動によって子どもをコントロールしていないか、それによって子どもの人生を舵取りしようとしていないかを、一度振り返ってみてください。

子どもの意志を尊重するための伝え方

親が子どもに「こんなふうに育ってほしい」と思っていても、子どもの意志を尊重せずにその思いを押しつけると、子どものやる気を奪ってしまうことがあります。

子どもになにかを伝えたいときは、親が命令や指示をしてコントロールするのではなく、親子で話し合いながら伝えたほうがいいと、私は考えています。

たとえば、子どもになにかをしてほしいなら、ただ「これをしなさい」と言うのではなく、どうして親であるあなたが子どもにそれをしてほしいかを伝えるのです。

そして「お母さんはこう思うけれど、あなたはどう思う?」と、それに対してどう思うか意見を聞いてみてほしいのです。